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26



「亜希…!!」


泣きながら、確かに"助けて"と言った大事な妹の名をクロームは口にする

確かに、自分たちの声は彼女に届いていたのだ

その事実がたまらなく嬉しかった

刀はまだ首につきつけられたままだったが、もう恐怖はなかった

そこにいるのは、確かに"妹"なのだから

今、この瞬間も彼女は"自分"と戦っているのだ


「なんで…なんでたかが人間如きに……!!」


ミヨの顔が苦痛で歪む


「、亜希…!」


斬られた胸元から血は流れているものの、一護は最後の力を振り絞ってゆっくりと立ち上がる

一番辛い彼女が頑張っているのだ……こんなところで、寝てなどいられない

斬魄刀を向けられ、ミヨの表情が酷く歪む


「せっかく…せっかく"あの方"に力を授かったというのに…!」


「っ亜希を、返して…!!」


「うるさい!!人間如きに…この私が負けるはずがないんだ…!!」


苦しげな表情で頭をかかえるミヨ

亜希が抵抗すればするほど、それはミヨへと真っすぐに返ってくる

こんなに抵抗されるだなんて夢にも思っていなかった

傷つけられて世界に絶望していた彼女が、"生きたい"と思うなんて想像できるわけがない


「ハァ…っアイツは、返してもらうぞ…!」


勝てるはずの戦いに、負ける

オレンジ色の死神に、二度も負ける


「……しが…」


――それは、とても許容できるものではなかった


「……たしが負けるというのなら………」


俯いた少女から放たれた言葉は、小さな呟きだったというのにハッキリとクロームの耳に届いた

先程まで"子供"らしく喚いていたのが嘘みたいに、落ち着いた…落ち着きすぎた静かな声

ぞくりと、背筋が凍る


「――私が負けるというならば!!」


ヒステリックな声で叫んだかと思えば――真っすぐ、走り出した


「この女も道連れにしてやるんだから!!」


誰も反応できない程の驚くべき速さで亜希が持っていた斬魄刀を奪い取り―――それを、彼女の体に勢いよく突き刺した


「――亜希…っ!!」


悲鳴をあげる少女の前で、赤が散った


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