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「―――クロームってさ、なんかすっごく亜希ちゃんのこと心配してるよね」


居間にて、ツナは出された茶を飲みながら不思議そうに口を開いた

亜希と黒崎一護を2人っきりにしてからずっと、お茶にも手を付けずにずっと心配そうに2人がいる部屋の方向を見ているクローム

生き別れ状態の妹にやっと会えたから、と言われればそれまでかもしれないが、それにしては随分と……


「……過保護だって思った?」


「あっ、そ、そういう意味ではなくて、」


感じていたことを本人から言われ、慌てて否定する(バレバレだろうが)


「…自分でも過保護だって分かってる。でも、あの子、昔から人の顔色ばっかり見ていたから…」


「黒崎くんと話しても押し切られて、我慢して終わる…とか?」


こくりと頷くクローム


「ずっと、あの人たちの顔色みて、機嫌を損ねないようにしてたから……」


自分を押し殺して"両親が求める子供"でいた結果、"個性"を出すことができなくなってしまった亜希

その押し殺された願望が、今回こういう形で表に出てしまった


「私は、骸様に会って色々変わって、良かったと思ってる。だから亜希だって…、」


「大丈夫だよ、きっと。クロームが変われたって言うのなら、亜希ちゃんだって変われるよ」


「……うん、そうだといいな…」


ようやく少しだけ笑みを浮かべるクロームに、同じように笑うツナ

過去はどうすることはできないが、未来は違う

変わりたいと願ったのならきっと、それは叶えられるはずだ

歩き出せたのだから――足を踏み出す勇気があったのだから、きっと大丈夫

黒崎一護と話し合いはスムーズに進んでいるらしく、荒だった声も聞こえてこず静かなものだ


「……亜希なら、きっと…」


優しい子だから、これから起こる出来事はきっと彼女を深く傷つけるだろう

でも……一人では飛び越えることのできない高い壁だって、"誰か"がいれば"何か"が変わる

高い壁を見上げ立ち尽くす彼女の手を引いて、少しだけ回り道して壁の向こう側に連れて行ってくれる人がいるだろう

もしかしたら思い切って壁を爆破する人もいるかもしれないし、穴を掘って下から行く人も、空を飛んで高い壁を飛び越えようとする人もいるかもしれない

ひとりではどうしようもない壁も、ひとりではないのならそれはただの"壁"でしかない


――あの子がまた、心から笑える日が来るまで……


壊れた壁の向こう側から、あの誰もが釣られて笑ってしまいそうになる、あの笑顔が見れる日が来るまで、今度こそ支えてみせる

世界中があの子を敵だと詰る日が来たとしても――差し出された<手>は、もう二度と離しはしない




それは密やかなく
(もう、泣かないで)


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