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54 それは密やかな決意



「………」


『………』


2人きりとなった空間

しかしお互い口を閉ざしたままで、一向に喋り始める気配はない


『……、』


決して社交的ではない亜希が自分から喋りだすなんてことはできるはずもなく、視線を落として沈黙に耐えることしかできなかった

ジリジリと精神力を蝕んでいく沈黙が続き、もう耐えられないと亜希が口を開きかけた、時


「――――アイツに…」


それは唐突に始まった

反射的に視線をあげた亜希とは反対に、一護は視線を落とす


「最初、アイツ…啓吾に聞いた時は、何冗談言ってんだって思った。きっと、それを俺に言った啓吾自身も信じちゃいなかったと思う」


それが織姫との問題のことを指しているのだとすぐに理解した


「でも、少しずつ井上の様子がおかしくなって……お前と距離を取るようになった井上を見て、もしかしたらと思うようになった」


急に生傷が増えた織姫

元々ドジでおっちょこちょいな所はあったが、それでも生傷は格段と増えた

少しずつ、少しずつ距離を取って……私が気付いた時にはもう、"噂"は"真実"へと形を変えてしまっていた


『…私はっ……、私は何も、してない…っ!』


言葉に詰まるも、久しく口にしていなかった否定の言葉を絞り出す


『誰も、信じてくれなかったけど…っ私は織姫を、友達を傷つけたりなんて…っ!!』


そう、誰も信じてくれなかった

たつきも、千鶴も、水色も、チャドも、啓吾も、誰も誰も誰も――――信じようとしてくれなかった

みんなが、私を"悪者"に仕立て上げた


『私が、どんな思いで……!!』


頬を伝う涙

悔しくて、悲しくて、つらくて

みんなの目が、私が悪いと決めつけた

織姫を苛める悪い子だと、みんなが私を見る目が変わった

―――誰も、疑ってくれなかった


.

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