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「……で、でも本当に困った時、その時はちゃんと俺らを頼ってね」


『…うん、ありがとう…』


困ったように、少しだけ笑みを浮かべながらも頷く亜希

人に頼ったり甘えたりすることが極端に苦手なのはクロームに似たのか、はたまたクロームが凪に似たのか…

変なところで強がろうとする部分は、この双子はとても似通っている


『さっきね、浦原さんと相談して、これからのこと色々考えていたの』


この行方不明は単なる家出だということ、行先は生き別れ状態だった双子の姉の元……先程話していた内容を簡単に説明する

最初は大人しく聞いていたツナと一護だったが、全容が明らかになるにつれて顔色を変える


「で、でもそれってさ、亜希ちゃんがまた色々…!」


『犯人が見つからない事件にするよりは、マシだと思うの』


「そうだけど…でも、もっと他にいい案があるんじゃ…!」


『…ありがとう、沢田くん。でも、もう決めたんだ。私が引き起こしたんだから、私が終わらせなきゃ』


「……く、クローム!」


「……私も言った、けど……」


何言っても無理だったと首を横に振るクローム

心配してくれている2人に、亜希は小さく笑みを浮かべた


『私なら、大丈夫…今度は逃げずに、私頑張るから…』


私なら大丈夫

きっと家に帰れば、母親には泣かれ、父親には叩かれるだろう

外聞をとても気にする人だから、当分の間外にも出れない……もしかしたら、高校も辞めさせられるかもしれない

――いや、元々居場所がなかったのだから、"異物"である私は消えたほうがいいのかもしれないが

周囲の人からの目も冷たいものになるだろうけど、それも全て耐えてみせる……だって、それらの引き金は全て私が引いたのだから


「――――…悪ィ、ちょっと2人で話させてもらえるか」


今までずっと黙っていた一護が、静かに口を開いた

先程声を荒げた時のような感情は見えず、ただ静かに亜希を見ていた

冗談じゃない、そう拒絶しようとしたクロームだったがその様子を見て言葉に詰まる


『……私は大丈夫だよ』


そして当の本人からも肯定の返事が出されたことによって、クロームは大人しく部屋から出る道しか残されていなかった


  ――パタン


目の前で閉められた襖に、クロームは心配げな表情を隠そうともせず、唇を噛みしめる


「…クローム、」


「……大丈夫……きっと、大丈夫、よね……」


「うん、きっと大丈夫だよ。だから俺らはちゃんと待っててあげよう?」


その言葉に、クロームは小さく頷き―――妹と、妹を追いつめた人がいる部屋を、後にした




逃げるなと囁く
(退路はどこにもない)

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