50
『本当にごめんなさい……私が弱かったから……っ』
言葉を紡ぐ亜希の声は、少しだけ震えていた
ぎゅっ、と強く手を握りしめ、しぼりだすように口を開く
『私が逃げようとしたから、沢田くんにも、黒崎くんにも迷惑を……!』
そう、全ての発端は自分なのだ
どう言い訳しようが、あの時あの手を取った瞬間に全てが始まったのだから
安易に現実から逃げ出そうとした結果が、様々な人に多大な迷惑をかけてしまった
『本当に、ごめんなさ…』
「っ謝るんじゃねぇよ…!!」
亜希を遮るように言葉を発したのは、一護だった
語気こそ荒かったものの―――その表情は、正反対のものだった
「謝るんじゃねぇよ…っ俺たちが、お前をそこまで追い詰めたからだろ…?謝らなきゃいけないのは俺のほうだってのに…」
『……違う、違うよ…!黒崎くんは何も、本当に…っ』
突然の一護の言葉に、動揺を隠せない
彼が悪いだなんて、全く思いつきもしなかった
追い詰めた――確かに、そういう言い方もできるかもしれない。だけど、
『…結局、私が弱かったから、ダメだっただけなんだよ…!』
最悪の方法で逃げたのは、私
勝手に一人で逃げたのは、他でもない私
「っだからそれは俺らが、」
「、っちょ…ちょっと2人とも待って!」
ヒートアップしていく会話を止めたのはツナだった
2人の気迫におされて中々会話に入ることが叶わなかったが、強引に割り込む
これ以上続けても、2人とも傷つくだけだ
「ちょっと落ち着こうよ、ね?亜希ちゃんも、黒崎さんも」
「…亜希、」
クロームが宥めるように亜希の肩に触れる
クローム自身、口を出すつもりはなかったが…このやり取りを見るに第三者がいなければ話し合いにすらならないことが分かった
――傷つけ合うために、会ったわけではないのだから
.
[ 115/122 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]