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ふすまの閉められた店内奥の一室
そこに彼女らがいることは、僅かに漏れている声で分かっていた
「……、」
分かってはいても、どうしても一護の足取りは重い
そんな彼を心配げな表情で見つめるツナだったが、どうすることもできない
「………んな顔するなよな。俺は平気だっての」
言葉ではこう言うものの、表情は固い
「………ボス…?」
気配を感じたのだろう、クロームの声が襖の向こうから聞こえた
もう、逃げられない
「う、うん。入って大丈夫、かな…?」
「……ちょっと待って…」
その言葉の少し後、ゆっくりと襖が開かれクロームの姿がハッキリと見えた
浴衣を身に纏う姿は見慣れないものではあったが、元気そうな姿に取りあえず安堵する
「えーっと…浦原さんに許可はもらってきたんだけど…」
「…聞いてる。入って……あなたも」
クロームの視線に促され、一護はゆっくりと部屋へと足を踏み入れた
『こんにちは、沢田くん……黒崎くん』
亜希は、少しだけ強張った表情をしながらも、ぎこちなくも笑みを浮かべて2人を出迎えた
顔色はすっかり良くなっており、背筋をのばして座る姿からほぼ体調が回復していることが見てとれ安堵する
「良くなったようでよかった…」
『凪から色々教えてもらったの。初対面だったのに酷いことしてごめんなさい…』
「え、そんな頭下げなくていいよ…!そんな怪我とかしてないし、ね!?」
頭を下げ謝罪する亜希に慌てるツナ
迷惑かけられたなど露ほども思っていなかったから尚更だった
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