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47 逃げるなと囁く誰か




「ではお呼びしてきますので、少々お待ちください」


――どうしてこうなったのだろう、と思わずにはいられない

目の前で閉められた扉だけを見つめながら、ツナは己の不運を心の底から嘆いていた

某赤ん坊から当然のようにとび蹴りを食らわされ、散々な夜から一夜明けた今日

様子が気になり、再び浦原商店に足を向けたこと自体は何もおかしくはない


「……あー……沢田、って言ったっけ?」


「は、はいっ!」


隣に立つ、オレンジ色の少年の声に、ツナは半分裏返った声で返事をする

そう、同じように様子を見に来たであろう彼――黒崎一護と同じタイミングになってしまったのが、不運だった

向こうも少なからずそう思っているのだろう、無言の空間をなんとかしようと話題を探しているのが見て取れる


「怪我、とか…大丈夫だったか?」


「あ、はい…特には何も…」


「そっか…」


「……」


「……」


見事なまでに、会話が続かない

本質的に黒崎一護のような不良タイプが苦手なツナと、話を盛り上げることが得意というわけではない一護の2人では、そうなることは必然なのだが


「……え、えーっと…亜希ちゃん、大丈夫ですかね…?」


悩んだ挙句、咄嗟に出てきた話題は亜希に関することだった

"亜希本人"とはまだ碌な会話もしていないツナだったが、彼女を心配する気持ちに偽りはない

ツナの心配げな顔に、一護の表情は曇る


「……俺に、アイツを見舞う資格なんてないんだろうな……」


自分たちクラスメイトが、彼女を追いつめた事実は揺るぎない

そんな自分が彼女を見舞っても……

辛そうな一護の表情に、ツナは首を傾げた


「資格、って……見舞いに来るのに、いらないんじゃないですか?」


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