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『家出、ですか…?』
「連れ去られたとなると事件となってしまいますし、家出というのが一番丸く収まるでしょう」
「……でも、それだと亜希が……」
言葉を濁すクローム
だがその言えなかった言葉を亜希は察していた
家出となると好奇に満ちた視線に晒されることだろう。世間の風当たりも強くなる
だが、この一連の"事件"を終わらすためには、誰かが泥をかぶる必要がある
それは他の誰でもない、この私がやるべきことだった
『大丈夫、私が引き起こしたことだもん…自分で責任、取るよ』
そんな妹の姿に、泣きそうな表情を浮かべるクローム
そんなクロームに、浦原は言葉を続ける
「まだ話は終わっちゃいませんよ。家出したなら行先も必要ですよね?その行先を凪サン、あなたの家にして頂きたい」
「私、の……?」
「お2人が一緒に暮らしていないというところから、何やら訳アリな家庭だと思いましたんで。その双子の姉の場所にいた、なんて恐らく親御さんからすれば公表したくない事柄なのでは?」
「……確かに、あの人の中で私はもう、"いない子"だから…」
何らかの偶然で生き別れ状態の双子の姉の存在に気づき、そのまま一緒にいた――…多少の強引さは否めないが、ある程度の筋は通っている
そしてあの両親からすれば、亜希に双子の姉がいたという事実は葬り去りたい黒歴史
今の家の近所では亜希は一人娘となっているのだ、そこに実は双子でした、なんて漏れたら…噂好きな人たちが喜ぶネタだろう
できるだけ事をこれ以上大きくしたくないと思うだろうし、実際そう動くだろう
『お姉ちゃんは何も関係ないです…!これは私がやったことで、』
「私、やれます」
姉をこれ以上巻き込むわけにはいかないと思っていた亜希は何で、と言葉を失う
詳しい経緯は知らないが、"捨てられた"姉が両親と関わったら嫌な気持ちを抱かせるだけだ
なのに何故――…
「ようやく会えた妹のために…私は、自分のできることをしたいの…」
『……そんな言い方、ズルいよ…』
そんなこと言われたら、頷くしかないじゃん
何も言うことができず、渋々亜希はその案を受け入れたのだった
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