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「亜希サン、"ヰ猟災理"という名前に聞き覚えはありませんか?」


『いかる………?ごめんなさい、知らないです…』


「そうですか……」


嘘か真か

見定めるようにジッと見つめるも、亜希の表情は変わらない

取りあえず隠しているわけではないと判断し、浦原はニッコリと笑みを作った


「ならいいんスよ、ちょっと気になっただけっスから!」


『あ、はい…』


首を傾げながらも取りあえず返事をする妹の手に、クロームはそっと触れる

覚えていないなら無理に思い出す必要はない

例えアレが誰であれ……大事な妹は、必ず守ってみせる


『お姉ちゃん?』


「……大丈夫だから、ね…亜希は私が、守ってあげるから…今度こそ…」


『、うん…ありがとう』


その手のぬくもりに、頬を緩ませる

そんな双子のやりとりをニコニコと笑みを浮かべながら眺めていた浦原だったが、思い出したかのように声を上げた


「そういえば、これからの展開をお話ししていませんでしたね」


『展開?』


「忘れているかもしれませんが、亜希サンは今行方不明中で捜索依頼が出されている身ですよ?何事もなかったかのようにするには騒動が大きすぎるでしょう」


『……、』


捜索依頼、と聞いて亜希の顔色が変わる

脳裏に浮かんだのは、過保護な母親の取り乱す姿

1時間帰宅が遅れただけで泣かれるのだ、行方不明だなんてなったら――どうなっているのか、想像すらできない

幽霊に連れ去られました、なんて言っても頭がおかしくなったと思われるだけで、真実を伝える手段はない

どんどん顔色が悪くなっていく亜希を見て、慌てて浦原はフォローの言葉を口にする


「だ、大丈夫ですって!こちらでシナリオは考えましたし、亜希サンが心配するようなことは何もありませんから、ね?」


『……で、でも、私行方不明って…』


「そう、その事実は変えることはできません。…いいですか、よく聞いてください。あなたは家出したんです」


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