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「おはようございます……おや、お似合いですよお二人とも」
『あ、ありがとうございます…』
率直なその褒め言葉に、亜希は少しだけ顔を赤らめた
眼鏡がないため少し視界はぼやけているが…ニヤニヤと笑っている浦原の顔ぐらいは見える
「押入れの奥で眠ってたやつでしたが、ピッタリみたいっスね」
「…ありがとう、ございます」
居間にいたのは浦原1人だけだった
亜希としては久しぶりの再会となるわけだが、相変わらず真意の見えない笑みは健在である
座りなさいと勧められ、取りあえずその場に腰を落とす
―――この場にたまたま浦原がいたのでなく、浦原が待っていた、と言ったほうが正しいのだろう
「えー、まずは亜希サン。体調がおかしいとか、違和感があるとか、そーゆうのあります?」
『いえ、少し筋肉痛なぐらいで…特には、』
「そうですか……昨晩のことは覚えておいでで?」
『……少し、ですが…』
夢を見ていたかのように、ぼんやりとしたものだが……姉に刃を向けたことは、ハッキリと覚えている
顔色が途端悪くなった亜希を、冷静に浦原は観察する
普段であれば同情ぐらいはしたかもしれないが、少女が"あの男"と関わりがあると分かった以上、油断はできない
例え一護の友人であろうと、危険だと判断すれば躊躇なく斬らなくてはならない
「では、黒崎サンの怪我を治したところも?」
『怪我、ですか…?』
何のことか分からないといった表情を浮かべ、首を傾げる亜希
その所作に嘘は見えない
『ごめんなさい、ぼんやりとしか覚えてなくて………私が、黒崎くんを刺した、んですよね……、黒崎くんの怪我は…!?』
「大丈夫っス、怪我は癒えたので歩いて帰られましたよ」
顔面蒼白といった亜希に安心させるように言えば、不安げな表情ながらも一応納得したようだ
これらの様子から、"ヰ猟災理"だった時のことは覚えていないと見て間違いないだろう
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