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「―――良かった、夢じゃない…っ」


泣き出しそうなその声と共に強く抱きしめられたことによって、目が覚めた

逃がさないと言わんばかりに強く抱きしめるその人は、亜希が良く知る人物だから…そっと、その背に手を伸ばした


『…おはよう、お姉ちゃん…』


まだ眠気が残っているのか、いつもよりぼんやりとした口調であったものの、幸せそうに目を細める

嫌という程泣き、今までの空白を埋めるかのように姉と語り合い、眠りについたのは僅かに日が昇った頃だった


「うん…、おはよう…!」


夢でも幻でもない

感じるぬくもりが、嘘ではないと訴える

―――それは、とても幸せなことだった


「体、痛いところとかない?気分はどう?違和感感じるところとか、」


『ふふ……大丈夫だよ、お姉ちゃん…どっこも痛くないし、…あ、でも少し筋肉痛、かな?』


矢継ぎ早に質問してくる姉に、少しくすぐったい気持ちになる

あぁ、私は大事にされているのだなぁと再確認するように


『ありがとう、一緒にいてくれて…』


「何言ってるのよ…お姉ちゃんだもん、当たり前、よ」


本当に何の異常も見当たらないと納得したのか、ようやく小さく笑みを浮かべるクローム

多少の小さな怪我はあるものの、あと数日もすれば跡形もなく消えているだろう


「……あ、あの…」


そんなほのぼのした空気に、第三者の声が響く

小さく、まだ幼い声

聞いたことないそれに2人が同時に部屋のドアを見やる


「お、おはよう、ございます…!これ、着替えです…」


特徴的な前髪の少女が、あたふたとしながらもズイっと着替えらしきものを差し出している

見たところ、シンプルな浴衣のようだ


『あ、うん…ありがとう…えーっと、』


反射的に受け取った後、名前が分からず口ごもると少女は小さい声ではあったものの自己紹介をした


「雨、です」


『そう…ありがとう、雨ちゃん』


その親切が嬉しくて、つい笑みを浮かべると少女…雨は途端顔を真っ赤にしてその場から走り去っていった

そのあまりの早さにポカンとするクロームと亜希だったが…次の瞬間には、同時に吹き出したのだった

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