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39



「……、」


重苦しい雰囲気で、また元いた居間へと戻った一行

クロームが戻ってくる気配はない


「……あの、」


しばらく経ち、その沈黙を破ったのはツナだった


「さっき…亜希ちゃんじゃない変な感じがしたんですけど…あれって一体…」


あまりよく死神云々のことを理解していないツナでも、ハッキリと感じ取れる程"違っていた"

亜希の姿をした他人……あの時感じた違和感は、きっと気のせいではない


「……それに、さっきから浦原サンたちが口にしてる"イカル"って誰のことなんだ?」


ずっと気になっていた、自分の知らない名前

その疑問をツナと同じように浦原らにぶつける一護

そんな2人を前に、浦原はため息をつきそうになるも寸前で止める

浦原や夜一にとって、"ヰ猟災理"という人物に関わることはそれ程までに憂鬱なことなのだ


「……先程彼女から発せられた霊圧は、間違いなく"ヰ猟災理"のものでした。どういう原理かは知りませんが、あの子とヰ猟災理は何らかの繋がりがあると思われます」


あの寒々しい霊圧の持ち主なんて、ヰ猟以外では考えられない

あの男の霊圧は、一度感じたら二度と間違うことなどないだろう…それほどまでに独特なものだった


「ってことは…"あの時"俺の傷を治したのは亜希じゃなくて、そのヰ猟災理って奴だったってことか?」


「その通りだと思いますよ。ヰ猟は死神でしたから鬼道くらいどうってことないでしょうしね」


「死神…なんで、だって亜希ちゃんは普通の女の子じゃ…」


「儂らにも分からぬ。じゃがあの男は隊長格にも劣らぬ実力の持ち主…儂らには分からぬ"何か"があっても不思議ではない」


脳裏に浮かぶ光景は、あまり気持ちのいいものではない

――誰の血か分からない程全身を紅く染めながら斬魄刀を振るう姿は、まさに鬼神の如くであった

他の隊長らとは全く違う次元に立っていたあの男に憧れていた死神は少なくないだろう

だが憧れていた反面……酷く恐れられてもいた


「そのヰ猟は今は何してんだ?俺があっち行ってた時、そんな名前聞いたことなかったけど…」


それ程の実力者でありながら尸魂界にいた時は名前も聞かなかったなんて、どう考えてもおかしい

そんな一護の疑問に、一瞬の空白を明けた後、浦原が説明する


「あぁ、彼はもう既に死神ではないから、っスかね」


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