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「亜希、」
声をもらしながら泣く姿は、まるで迷子の子供のように頼りない
自分のせいだと責める彼女自身が、きっと誰よりも傷ついたというのに
誰も、何も言うことができない
お前のせいだと責めることなんてできず、かといってお前は悪くないと言えばそれは結果亜希を追い詰めることになる
『ご、め……さい…っ』
「亜希…、」
今までため込んでいたものを全て吐き出すかのように泣く妹を、ただ姉は抱きしめることしかできない
亜希の苦しみも悲しみも、全部半分にできたらいいのに――
限界まで追い詰められても、誰かを傷つけるような言葉を言わない…言えない、亜希
「……っ、」
一護はぎりっ、と拳を強く握り締めた
たった半年たらずの時間で、自分たちは彼女を追い詰めてしまった
何がきっかけで、誰が悪かったのかはもう分からない
入学式当初に見せてくれた控え目な笑みはどこにもない
きっと、謝罪の言葉を口にすれば彼女は困ったように笑いながら許してくれるだろう
それが分かっているからこそ、一護は何も言わなかった
――謝ったからと言って、全てが元に戻るわけではないのだから
「……今日は、そっとしておきましょう、黒崎サン、沢田サン」
部屋の外から様子を見ていた浦原の言葉に、頷くことしかできない
今自分たちができることは、なにもないのだから――静かに、2人のいる部屋から離れる
「…先程の霊圧…あれは確かにヰ猟のものじゃったが…今は全く感じられん」
「まるでアタシらを呼び寄せるみたいなタイミングの霊圧でしたしね」
「あの少女…亜希とヰ猟の間に何らかの関係はあるのは間違いあるまい」
「しかし彼は今……」
言いかけた言葉を飲み込み、浦原は考え込む
彼は今、間違いなく"自由に行動できる場所"にはいないというのに、何故現世に干渉できるのだろうか?
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