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35



「――確かにあの娘からは特異な霊圧を感じるな」


不意に、第三者の声がこの場に響く

浦原と一護には馴染みがあり、ツナとクロームは初耳の声


「夜一さん!」


夜一と呼ばれたのは、一匹の黒猫だ

この黒猫が喋るというのは一護にとっては当たり前のことだったが、ツナらは驚きで目を見開いている

猫が喋るなんて―――あり得ない!

2人の目がそう叫んでいるのをチラリと横目で見つつ、夜一は言葉を続ける


「だが今はその霊圧も落ち着いておる。安心せい、じきに目が覚めるはずじゃ」


「そうっスか、ありがとうございます夜一サン」


「……な、な、なんで猫が喋って……」


当たり前のように会話をする猫に、ツナがようやく衝撃から立ち直って当り前の質問を口にした


「ふん。儂は猫ではない。今は故あってこのような姿をとっておるが、元は主らと同じヒト型じゃ」


「…故もなにも楽だからじゃ、ッイテェ!!」


余計なことを言った一護をその鋭利な爪でひっかき、悲鳴をあげる彼を綺麗に無視する


「――だが違和感は霊圧だけではない…確証はないが、あの霊圧どこかで……」


「あぁ、夜一サンも思いましたか…以前お会いした時は感じなかったのに、今日の彼女から何か違和感感じるんスよね…懐かしいというか……」


夜一と浦原だけが感じる"違和感"

思案気な表情でそれが何かを考え込む2人

喉元までその答えが出かかってるのに出てこないという、何とも言えない不快感


「―――、!」


だが、思考時間は僅かしか与えられなかった

突然、クロームが俯かせていた顔をパッとあげた

それに少し遅れて、浦原と夜一の表情が変わる

ツナと一護だけは分からず、その急な変化を見せた彼らを不思議そうに見つめている


「……思い出したぞ、喜助」


「奇遇っスね、私もです」


僅かに廊下の奥から漏れ出している霊圧

それを感じ取った2人は同時に"彼"のことを思い出した

クロームも、あの時感じた"亜希ではない亜希"の雰囲気を感じ取り、唇をかみしめた


「「"ヰ猟災理(いかるさいり)"」」


ため息と共に口に出された名前がツナらの耳に入った瞬間、廊下の奥から大きな霊圧が流れ込んできた




彼女のナカの
(ニヤリと笑った死神)


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