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浦原が大雑把に簡潔に、それなりに分かりやすく死神について2人に説明しているのを、一護はボンヤリと聞いていた
…いや、聞いていたというのは語弊があるかもしれない
正しくは、ただボンヤリと眺めていた、だろう
少し前にも、これに似た光景を見たことがある
――亜希が、初めて虚に襲われたあの日にも、こうやって浦原さんが説明していた
「えーっと、つまり…そこの黒崎さんは普通に生きてるけど、魂だけ死神になって……?」
「虚と呼ばれる、わるーい霊からみんなを守ってるっスよ」
「…亜希は霊感が強くて、それが原因でその虚…ってのに襲われて、助けられた……」
「そこでは逃げられたんスけどね。今回キミたちが見たその少女がその時の虚です」
最初に亜希を襲った時、あの虚は虚らしい姿をしていたというのに、今日は随分と様子が違っていた
まるで人間みたいな姿をしていた…手の甲にぽっかりと開いていた"穴"さえなければ、だが
「――さて、次はこちらからいいですか?あの"閉じられた空間内"で何が起こったんスか?」
浦原の問いかけで、意識を彼へと戻す
いつの間にか浦原による大まかな説明は終わったようだった
「お…ぼ、僕もよく分からないですけど…急に、ク…凪があの公園に行きたがったんです。今まで一回も行ったこともない場所だったのに…」
「……」
何も喋らないが、特に否定の言葉もしないためツナは取りあえず話を進める
「そしたら、そこに黒崎さんがいて…もう遅いってことで凪を引っ張って公園から出たんですけど…振り返ったら黒崎さんの姿がなくて…」
「……俺もあの時、急に2人の姿が消えたように見えた」
つまり、ツナとクロームが公園の敷地内から完全に出たその瞬間に、結界が張られたということだろう
「アイツは間違いなく俺が前取り逃がしたあの虚だった。姿は随分と変わってたけど……アイツは、亜希の精神を壊した、って言って……亜希と俺を、戦わせた…」
「……っ!」
クロームの肩がピクリと震える
だが、唇を固くむすんで何も言わないようにと、溢れ出そうな言葉を必死に押しとどめる
彼が大事な亜希を追い詰めた、だけど、助けようともしてくれた
自身は傷だらけになっているのに、亜希にはなるべく怪我をさせないようにしてくれたのだろうと推測もできる
間接的に殺そうとしたのが黒崎一護なら、直接的に助けようとしたのもまた黒崎一護だ
だから――何も言わない、何も言えない
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