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本当は、全てをロビンに打ち明けてしまいたい
全部吐き出して…楽になりたい
だけど、それは"逃げ"であり"押しつけ"だと感じてしまうのだ
『……ごめんね、ロビン……それでもやっぱり、私はロビンに話すことはできない』
「そんな…」
『言ってはいけないことが多すぎる…私は、ロビンを危険な目に合わせたくない…!!』
辛そうに、拳を握りしめて言葉を吐きだすアリス
子供ながらに聡いロビンは、これ以上何を言っても彼女が何も言ってくれないだろうと悟った
1年前、いつも一人だった自分にできた初めての友人
いつも研究室の奥にいて、自分が遊びに行けば嬉しそうに迎え入れてくれる大切な友人
気持ちの悪い"能力"のことを彼女に打ち明けられない自分が、彼女を責める権利もないことに同時に気づく
『でも、これだけは信じて欲しい…私は、ロビンのこと本当に大好きだし、親友だって胸をはって言える!!』
漆黒の瞳は、片目しか見えないというのにその気迫は十分伝わってくる
「……わかった。私は、親友のアリスの言葉を信じる」
『ロビン…!』
「それに、アリスが教えてくれないなら、私が調べるんだから!だって私、考古学者だもん!」
そのロビンの言葉に、一瞬呆気にとられるが次の瞬間耐えきれずアリスは小さくふき出す
『ははははっ!そっか、ロビンは考古学者だもんね!ロビンならきっと私達一族の"秘密"に触れることができるかも?期待しないで待ってるよ!』
「あ、信じてないでしょ!?絶対に調べてやるんだから!!」
涙が出るほど笑っているアリス
それは10歳の子供らしい、無邪気で明るい笑顔だった
『うぅん、信じてるよ?』
「笑いながら言われても説得力無い!!」
『ご、ごめ……ププッ』
「アリスっ!!」
先程まで泣いていたとは思えない程明るい声が海岸に染みわたる
だが彼女たちがいる場所からそれ程遠く離れているわけではない海辺に、一人の巨人が倒れていることはまだ誰も知らない
――シアワセが、誰も気づかない間に少しずつ崩れていっていた
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