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ロビンとようやく再会を果たせたのは、オハラに辿りついてから半年が経ってからだった
全知の樹、オハラ図書館兼考古学研究所の奥一室に隠れるように暮らし始めてからも、半年が経った
手配書は既に全世界に発行されている
だが"紅の魔女 アリス"としか書かれておらず、写真もないただの紙切れだから見つけられる可能性はほぼないだろう
ユリアとの親子関係は徹底的に隠すと決めたのか、私のことは"ユリアの仲間"という扱いになっているようだ
――それだけ政府は"ウィザー・D・アリス"という存在を危険視しているということなのだが
高額な賞金首となったアリスに対しても、研究所で働く考古学者たちの態度が変わることはなかった
まるで自分の娘のように、色々と構ってくれて…とても良くしてくれている
"歴史の本文"の研究にだって携わった
元々歴史の勉強は好きで、賞金首でさえなければ考古学者になるための試験を受けていた
『…あなたが、ニコ・ロビン?』
読み終わった本を返しに向かった図書館で、何となく見覚えのある姿を見て思わず声をかけていた
驚いたように振り返った彼女は、アリスの姿を見て目を僅かに見開く
「あなた、あの時の……」
『助けてくれてありがとね。あ、私アリス。博士のところで世話になってるんだ』
当たり障りのないように説明し、にっこりと笑みを浮かべる
最初は警戒したように笑いもしなかったロビンだったが、2つしか離れていない歳の近さからか次第に打ち解けていった
『ロビンは勉強?』
彼女の手に持たれているのはとても7歳の少女が読むようなものではなく、古臭くて分厚い歴史書や論文が多い
アリスが返しにきた本も借りたかったようで、本を受け取ったロビンは頷く
「私、考古学者になりたいの。博士たちみたいな、立派ですごい考古学者に!」
きらきらと輝くような笑顔を浮かべて嬉しそうに自分の夢を語るロビン
これだけ勉強をしているのなら試験も難なくパスすることだろう
『そっか…うん、頑張って!私も応援するから!』
1ヶ月後に試験があり、結果が分かるのは約半年程度かかるらしい
ロビンの肩書きが"考古学者"となっている頃にはもう自分は10歳になっている
――ロビンの試験が無事パスしたのを見届けた後、このオハラを出よう
彼女には彼女の夢があるように、私にも私の夢が――叶えなければならない夢が、ある
例え半年の月日が経過してようと、あの日の悔しさが薄れることはなかった
必ず――必ず、どれだけの日数がかかろうと…母を殺したあの人たちを、この手で殺してみせる
『……夢、叶うといいね』
「うん!」
嬉しそうに笑ったロビンに、アリスもまた笑みを浮かべた
それは、純粋なロビンのとは違い…酷く大人びたもので、2人が談笑している風景を目を細めて眺めていたクローバー博士は痛ましそうに顔を歪めたのであった
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