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「も…申し訳ありません!しかし緊急を要するという事で…エニエス・ロビー本島より電伝虫が…!!」
「何をォ!?電伝虫ならこの部屋に直接かけてくれば…っておい!受話器がはずれてるじゃねェか!いつもいつも一体誰の仕業だァ!!――――ん?お前今緊急の用件といったか?」
そこで一度会話は途切れ、すぐにスパンダムが靴音をわざと響かせ、部屋から姿を現した
「スパンダ…!」
『…』
囚われている3人の前に立ち、スパンダムは得意げに笑う
「…わははは…エニエス・ロビー本島より緊急の報告があるらしい…緊急って程でもねェだろうが…予想はつくよなァ?」
ロビンの表情が強張る
「頑張ってウチの兵士を"5人も"ぶっとばした、麦わらのルフィがどうなったのか…世界政府に逆らったバカ共のなれの果てを一緒に聞いてみようぜェ……」
5人?
あのルフィが、たった5人しか倒してないというのか?
100%あり得ない。命を賭けてもいい。絶対にそんなわけがない……500人のほうが納得できる
そんなアリスの心のうちに気づくことなく、スパンダムは得意げに電伝虫に話しかけた
「オイ衛兵!あー…こちらスパンダムだ!」
≪あっ!長官殿でありますかっ!よ…よかった、やっと報告を!えー何から話していいか…!≫
とてもじゃないが電話の向こうに楽勝ムードは漂っていないというのに、己の勝利を全く疑っていないスパンダムは落ち着くよう言い、報告を求めた
しかし、それはスパンダムの信じていたものとは全く違うものだった
≪侵入してきた海賊約60名に、現在エニエス・ロビー本島内最終地点、裁判所前広場まで攻め込まれました!!≫
「…は?」
≪次いでは本島前門の巨人の門番、オイモとカーシーも海賊側に寝返り、只今本島中央付近を逆走中!こちらの衛兵の被害総数はおよそ2千人強!――その内千人以上を一人でなぎ倒した船長"麦わらのルフィ"は忽然と姿を消した為――目下捜索中であります!≫
次々と明かされていくエニエス・ロビーの状況に、思わず顔がにやける
一体誰が想像しただろうか?この世界政府の玄関に、仲間を助けるためだけに乗りこむ海賊がいるだなんて
過去数百年、破られたことのない不夜島―――この戦いが終われば、モンキー・D・ルフィとその仲間の名は大きく広まるだろう…
『ふふっ』
得意げに電伝虫を見せてきたあの余裕はどこに消えたのか、顔面蒼白になってまた部屋へと戻っていったスパンダムの情けない後ろ姿に堪えようと思っていたのだが、思わず声が漏れる
散々偉ぶって上から人を見下ろしてきた男にとっては今の状況はまさに"ありえない"のだろうが……
「ロビ――ン!!アリス――!!迎えに来たぞォ―――――!!」聞こえたその声に、言葉に、アリスは無意識のうちに笑みを浮かべていた
『ルフィ…』
彼ならきっと…頑丈な鎖で繋がれたロビンの心のドアを、開けることができると信じている
それは、大きな希望の"光"であった
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