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『私はあなたが一言助けを求めてくれれば、いつだって動くわ。20年前の約束――忘れちゃったの?』
「……そんなもの、した覚えはないわ」
『…そう……』
私にとってはとても大事な"約束"だったのに――彼女にとってはただの"言葉"でしかなかったのだろうか?
一瞬、意識が逸れたその時
「そんなにニコ・ロビンが心配なら一緒に来ればよかろう」
案外近くから、ゾロが相手をしているはずのカクの声が聞こえてきた
脅威の反射神経で振り返り、鞘から抜いた"紅"で斬りかかろうとするも―――その手を握られ、ガシャンと何かがつけられた
『な……っ』
「アリス!?」
アリスの手から"紅"が落ち、彼女はその場に崩れ落ちてしまった
その急激な変化に、ナミは驚いて彼女の名前を呼ぶ
『こ、れは……』
「海楼石で作られた手錠だ。話には聞いていたが、相当海楼石との相性は悪いようだな」
悪魔の実の能力者でも、ここまで極端に力を奪われることはない
多少体が重くなり、能力が全く使えなくなる程度だ
だが、アリスの場合は違う
体中の全ての力を奪われ、立っていることはおろか意識を保つのがやっとの状態に陥ってしまうのだ
カクに抱きかかえられるアリスを、ロビンは感情の見えない瞳で見つめる
『はな、して……っ』
「それはできん相談だな」
捕まってしまったアリスを助けようとルフィが駆け寄るが、それはルッチによって止められてしまう
「行け、ニコ・ロビン」
ルフィを腕1本で引き留めながら、ルッチは言う
その言葉に逆らうことなく、ロビンは今度こそ本当に窓から飛び降りた
『ロ、ビ……』
揺れる視界で、アリスはただそれを見ることしかできなかった
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