紅の魔女 | ナノ




58




「――"歴史の本文"を求め、研究・解読する事は…世界的な"大罪"だと大昔から政府が定めている。それくらい承知のハズだ…!」


アイスバーグの部屋

彼は荒い呼吸を繰り返しながら、目の前で銃を突きつけている女に語っていた


「おそらく今、世界中でその文字の"解読"ができるのはお前一人だ……だからこそ、当時8歳という幼い少女だったお前の首に、政府は高額の賞金を賭けた――お前が世界で唯一…"古代兵器"を復活させられる女だからだ、ニコ・ロビン」


名前を呼ばれても、ロビンの表情も銃を持つ手も何も変わらない

何を言われても、表情は動かなかったが――だが、次のアイスバーグの言葉に初めて表情を変えた


「おれァ古代兵器"プルトン"の"設計図"を持っている!!」


「兵器の設計図…!?」


"プルトン"――それは、遥か昔このウォーターセブンで造られた戦艦の名前だ

強大すぎる力に対抗するために、代々引き継がれてきた抵抗勢力

アイスバーグの元に度々訪れていたのはこの設計図を狙ってのことだった


「……俺に設計図を託したトムという男は…20年前"オハラ"の事件から唯一逃げ出した少女のことをずっと気にかけていた」


お互い銃を突きつけたまま動かない


「幼い姿をしていても"オハラの悪魔達"と同じ思想を持った危険な子だと…だから、製造者の意思を汲んだ俺にはお前を止める責任がある……」


本当なら存在が公になった時点で設計図は燃やしてしまったほうがいいのだが――それができないのは、兵器復活の可能性が完全になくならないから

ニコ・ロビンという女が生きている限り、兵器復活の可能性はついて回ってくる

引き金を引こうとしたアイスバーグを押さえつけ、その額に銃をつきつけたロビン


「死ぬ前に…言っておきたい事はそれでいい?」


完全に床に抑えつけられ、身動きがとれなくなった彼の上に跨り口を開く


「………最後に一つ教えてあげる。あなたは"歴史の本文"を解読でき、兵器を復活させられるのは私一人だと言ったけど……それは間違っているわ」


思ってもみなかったその言葉に、アイスバーグは目を見開く


「オハラの…生き残りが他に……!?」


「いいえ、オハラの生き残りは正真正銘私一人……それなのに解読できるから、10歳で1億を超える賞金をつけられたのよ、"彼女"は……」


理由はそれだけではなさそうだけど

小さく呟かれた言葉を、もっと深く追求しようとするがそれは叶わなかった


「……まぁこれから死にゆくあなたには関係ないわよね。ここで私を殺して止めたとしても、あなたが今"設計図"を奪われては結果は同じだもの」


「……ンマ――…じゃあもう一言だけ…言わせてくれ………作戦にハマったのは……お前らの方だ…」


―――思ってもみなかったその言葉に、今度はロビンが驚く番だった


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