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――今夜10時!また俺はここへ戻ってくる。そうしたらメリー号をかけて"決闘"だ!
怪我を負っているというのに、船長であるルフィに決闘を挑む…それは相当な覚悟だということ
メリー号の船首の上に乗り、外の光景を眺めながら小さくため息をつく
ただルフィの元気な姿を見に来ただけだというのに……思っていた以上に深刻な状況にため息もつきたくなる
あれも若さ故のものなのだろうか?
『……あなたも辛いわね、メリー号』
哀しいと全身で訴えてくるこの船
長いこと大切に使われていたことがそれだけでも容易に理解できる
『……はぁ』
自身の体に幾重にも巻かれていた包帯を1枚ずつ巻きとりながら、大きなため息が自然と出てくる
クルクルと慣れた動作で包帯を巻きとり、先程チョッパーから譲ってもらった包帯を手にとる
もう殆どの傷は治っているが、まだウソップからのものが治りきっていない
手足にできた、まだ血の滲む傷にのみ包帯を巻きつけていけば白い面積は先程の半分程度になった
そして最後に、左目に巻かれた包帯をゆっくりと外していく
『もうそろそろ眼帯買わないとな…』
ルフィに会う前にちょっとした不手際で眼帯を引き千切ってしまい、それ以来包帯で間に合わせているがやはり不便さは拭えない
ルフィとウソップの決闘を見届けた後、街に出て買っておこうか…
ゆっくりと左目を開ける
別に目が潰れているわけでもなく、傷もない綺麗な左目だ。隠す理由はなさそうに見えるが……
だが、その漆黒の瞳に浮かび上がっているのは――普通ではありえない、深紅の十字架
それは彼女を"彼女"として生きていくための存在理由である血統の証明
誇り高き一族のアカシである、深紅の十字架――
これが、彼女の異様な賞金額の大きな理由のうちの一つ
だからこそ、彼女はこの瞳を隠しながら生きていかざるを得ない
『――もうすぐ10時か…』
いつも通り包帯で左目を隠し、時計を見ればウソップが来るであろう時間はすぐそこまで迫っていた
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