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「面目ねェ!!みんな…!!大事な金をおれは!!」
目が覚めたウソップはゾロの足にしがみつき、必死に謝っていた
まだ怪我が治ったわけではないとチョッパーが引き離し、ようやくまともに話す機会が訪れる
「お前、あの時の……」
ウソップの視線が自分に向けられたのを感じ、アリスは秘密とばかりに"しー"と人差し指を口にあてた
自分の怪我を他人に移してしまったと知れば彼はまた謝ってくるだろうし、あまりこの能力は表沙汰にする気もない
そのアリスの合図に気づき、ウソップは大人しく口を閉ざす
そして仲間と、奪われた金の行方を聞き肩をおとす
「……じゃあやっぱり…金は戻らねェのか…」
「いや、それもフランキーってのが帰って来ねェとわかんねェんだ。もしダメでもまだ1億ベリーもあるんだからいいよ!気にすんなよ!!」
「まったく無茶しやがる…!命があったからよかったものの…」
「よくないわよ、お金は!」
ルフィとサンジの言葉にしっかりと反論するナミは流石、というべきか
肩を落とし、その責任を感じているウソップは――まだ何も知らない
「だけど…じゃあ船は…メリー号は1億ありゃ何とか直せるのか!?せっかくこんな一流の造船所で修理できるんだ。この先の海も渡って行ける様に、今まで以上に強い船に……!!」
「いや、それがウソップ」
その言葉を、途中で止めたルフィだ
いつも通り…何てことないかのように彼は宣言する
「船はよ!乗り換える事にしたんだ。ゴーイングメリー号には世話になったけど、この船での航海はここまでだ」
それは"船長"としての決断
先に、進んでいくための必要な決断
だが寝耳に水状態のウソップは事態が呑み込めず、ただただ呆然とルフィを見ている
「ほんでな、新しく買える船を調べてたんだけど、カタログ見てたらまァ1億あれば中古でも今よりデカイ船が…」
「待てよ待てよ…そんなお前…!冗談キツイぞ、バカバカしい…!」
軋みはじめた空間
ギスギスとした、嫌な空気がこの空間を支配する
壁に寄りかかって成り行きを見ていたアリスは、その空気に小さく眉をひそめた
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