紅の魔女 | ナノ




141


多くの人たちが、ルフィに呼びかけている

その多くの声に混ざって、確かに聞こえる"小さな声"


『…あなた……まさか、ここまで…!?』


「アリス!?どうしたのよ!」


『そう…最期の力を振り絞って……』


ナミの言葉に返すことなく、どこか遠くを見たまま独り言を呟くアリス

彼女以外にも、少しずつその"声"は届いていく


「この声、一体……!?何だ、下って……!」


麦わらのクルーにだけ、響く"声"


≪第一支柱麦わらのルフィ砲撃、5秒前≫


そして、誰よりも"あの子"を信頼していたウソップが、叫んだ


「海へ飛べ―――!!」


砲撃へのカウントダウンは4秒前、3秒前と刻々とすすんでいく

一見ヤケになったかと思われるそれだったが、ウソップは泣きながら海へ、と繰り返す


「助かるんだ…!助けに来てくれたんだ!!まだおれ達には…!仲間がいるじゃねェかァ!!」


ゾロの肩を掴み、涙を流しながらウソップは叫ぶ

そう、助けに来てくれたのだ


「海へ!!」


動けないルフィの体はロビンの能力によって転がされていき、海へと投げ出された

能力者であるルフィが海に投げ出されたことに海軍たちはざわめく


「血迷ったか海賊共ォ!!」


カウントダウンが1秒前となったとき、アリスもまた皆と同じように迷いなく海へと飛び込んだ

不安なんてあるわけがない


(……帰ろう、みんな!)


その海に堂々とはためくのは、麦わら帽子をかぶった海賊旗


(また…冒険の海へ!)


第一支柱が完全に破壊された時、そこにあったのは"もう一人の仲間"の姿


(迎えに来たよ!!)


「メリ―――!!」


もう海を渡れないと判断された、ゴーイングメリー号が――仲間のピンチに駆けつけていたのだ

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