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『大丈夫?ロビン』
「え、えぇ…」
目が覚めた瞬間、刃が大事な彼女に向かっているのを見て、何も考えずにその間に入り込んでしまった
"風"が解放された喜びに震え、少しだけお願いしたつもりだったが張り切り過ぎて随分と象を吹き飛ばしてしまったようだ
気味が悪いぐらい軽い体に若干違和感を抱えながら、アリスは後ろを振り返ってロビンを見つめる
『ごめんね、迷惑かけちゃって…でももう大丈夫だから。私も、一緒に戦うから…』
「アリス…」
『大丈夫、カディアやオハラの惨劇は私が繰り返させない。皆で、帰りましょう?』
懐から一丁のピストルを取り出し、何も心配いらないとばかりに笑みを浮かべる
それに同調するかのように、フランキーが周囲にいる海兵たちに攻撃をしかけた
「その思いは俺だって同じだ!俺は昔一度死んだ男!麦わら達が生きてここを出る為ならこの命を投げうっても構わねェ!護送船を明け渡せ――っ!!」
『道は、私たちが作ってみせる…!』
その後ろ姿を見て、ロビンも自然と立ちあがった
「私もやるわ!もう大丈夫…オハラの時とは…あの時とは違うもの……!恐がる事なんて何もない!私はもう…1人じゃないから!!」
――そこに、海には誰もいないと泣いた少女はもういなかった
友がいて、仲間がいて……彼女は、もう1人ではない
その瞳を見て、アリスは誰にも気づかれないように小さく、笑みを浮かべた
20年という長い年月で培ってしまったものを、ルフィたちはあっという間に溶かしてしまったようだ
『ふふ……さて、あの船に行かなきゃ…』
ずらりと前に立ちふさがる海兵たちを、面倒だと言わんばかりに見まわす
そして、ずっと肌身離さず持ち歩いていた銃を構えた
弾丸を込めることもなく、ただその引き金を何の躊躇いもなく――ひいた
『――風の、祝福を』
口にした言葉と、その銃口から放たれたものは、余りにも違いすぎた
ただの弾丸ではない
放たれたもの、それは――"風"
『……よかった、腕は衰えてないみたいね』
安心したように小さく呟いた後、彼女は"誰もいなくなった"道を走り抜けていった
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