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もう刃はすぐ近くまで迫っている
フランキーが駆け寄ってくるが、恐らく間に合わないだろう
その小さな体に、象が迫りくる
「……っ!」
声なき悲鳴が、ロビンの口からこぼれたその時―――すっと、アリスが片手を前に突き出した
その手に刃が突き刺さるや否やというところで…彼女は、顔をあげて象と目線を合わせた
「………パ、パオ…」
するとどうしたのだろうか、ピタリとファンクフリードは動きを止めたのだ
それどころか、恐れるように後ずさりしている
「おい、ファンクフリード!!てめェなにしてやがる!!」
持ち主であるスパンダムが怒鳴るがファンクフリードは後ずさりをやめない
驚いたように、ロビンとフランキーはその光景を見つめる
『………その鼻を、元に戻しなさい』
ピクリ、と象は冷や汗を流す
『聞こえなかったの?元に戻しなさい…その鼻を根元から切られたくなかったら』
その迫力に完全におされたファンクフリードは、ゆっくりと鼻を元の状態へと戻す
『そう…いい子ね』
淡い笑みを浮かべたアリスの周囲に、風が集まる
そよ風から始まったそれは、瞬く間に突風へと姿を変える
『お前の主人のもとへ、帰りなさい』
その言葉と同時に、立っていられない程の風が吹き荒れ、それは大きなファンクフリードを躊躇なく吹き飛ばした
「え、」
それは真っ直ぐ、持ち主のもとへと飛んでいき……象の巨体が、スパンダムを押しつぶすように倒れていった
――ズドォォン…!
あっという間に行われたこの光景に、周りの者も何も反応することができなかった
武器など持っていない、たった一人の小さな女に――言い知れぬ恐怖を、感じた
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