紅の魔女 | ナノ




131


もう刃はすぐ近くまで迫っている

フランキーが駆け寄ってくるが、恐らく間に合わないだろう

その小さな体に、象が迫りくる


「……っ!」


声なき悲鳴が、ロビンの口からこぼれたその時―――すっと、アリスが片手を前に突き出した

その手に刃が突き刺さるや否やというところで…彼女は、顔をあげて象と目線を合わせた


「………パ、パオ…」


するとどうしたのだろうか、ピタリとファンクフリードは動きを止めたのだ

それどころか、恐れるように後ずさりしている


「おい、ファンクフリード!!てめェなにしてやがる!!」


持ち主であるスパンダムが怒鳴るがファンクフリードは後ずさりをやめない

驚いたように、ロビンとフランキーはその光景を見つめる


『………その鼻を、元に戻しなさい』


ピクリ、と象は冷や汗を流す


『聞こえなかったの?元に戻しなさい…その鼻を根元から切られたくなかったら』


その迫力に完全におされたファンクフリードは、ゆっくりと鼻を元の状態へと戻す


『そう…いい子ね』


淡い笑みを浮かべたアリスの周囲に、風が集まる

そよ風から始まったそれは、瞬く間に突風へと姿を変える


『お前の主人のもとへ、帰りなさい』


その言葉と同時に、立っていられない程の風が吹き荒れ、それは大きなファンクフリードを躊躇なく吹き飛ばした


「え、」


それは真っ直ぐ、持ち主のもとへと飛んでいき……象の巨体が、スパンダムを押しつぶすように倒れていった


――ズドォォン…!


あっという間に行われたこの光景に、周りの者も何も反応することができなかった

武器など持っていない、たった一人の小さな女に――言い知れぬ恐怖を、感じた

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