紅の魔女 | ナノ




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「ワハハハ!!見ろ、出航準備は万端だ!もう邪魔するものなど何もない!!」


血の痕を残しながら、スパンダムは2人を引きずっていく


「お前らに一つ、いい事を教えといてやろうか。俺達が今上ってきた階段、その上部に仕掛けてある"地雷"をONにしてきた……もしだ、万が一…ここへ来ようという輩がいたら、階段ごと吹き飛ぶ仕組みさ!面白いだろう?」


「…ハァ…っ…でも…門は…くぐらない…!!」


スパンダムの言葉にだって、ロビンが絶望することはもうない

何故なら、今の彼女は仲間が助けに来てくれることを全く疑っていないから


「ハァ…"助ける"と…言ってくれたから…!」


「誰も来やしねェよバカ女!!どいつもこいつも、"バスターコール"の業火に焼かれて死ぬんだよ!!神聖なる旗を海賊に撃ち抜かれたという、我々の赤っ恥さえ"バスターコール"はかき消してくれる!!――20年前、オハラで暴れた"巨人海兵"の一件のように…!!」


巨人海兵、という件にロビンは僅かに反応を示す

それはまず間違いなく…サウロのことだろう


「この…!!」


無理やり立たせようとしたが、すぐにそれを諦めて2人を強く引いて力づくで門へと歩いていく


「てめェ…俺が何も知らねェとでも思ってんだろ!?」


得意げに語られた言葉に、ロビンは言葉を失う


「元海軍本部中将ハグワール・D・サウロの乱行、貴様の母オルビアの事、カディアを滅ぼした"魔女"が現れた事…あの時オハラで何が起きたのか、俺は全部知ってる!!
聞かされたからさ…!オハラという悪魔達の住む土地へ踏み込み、その大罪を暴き!"バスターコール"の合図を出したのは、当時"CP9"の長官だった、俺の親父"スパンダイン"だからだ!!!」


脳裏に、博士を撃った男の姿がよみがえる

"バスターコール"のスイッチを目の前で押した、あの男の息子が…今自分を捕らえている、この男


「あの時オハラにいた者達は、"魔女"を含め全員死に絶えたもんだと…政府は逃げ出した一匹のガキを、見落としていた」


8歳の子供が、大金目当ての大人に何度殺されかけた?

寄ってくる人間は誰も信用できない。安心して寝る場所もなく、食べるものもない――――そんなロビンの20年を、男は想像したくないと笑う

ポロポロと声もなく涙を流すロビンの頭をつかみ、視線を合わせる


「20年前…お前の首に賞金を懸けたのは俺の親父だ!!世界平和の為にな!そして20年たった今、息子の俺がその生き残りを狩り、オハラの戦いは幕を閉じる!!オハラは敗けたんだ!!」


オハラを守るために戦った、友人

世界と戦ったオハラを語り継げと巨人の友人は言ってくれた

氷漬けにされても、最後の最期まで笑ってくれていた

親友だと、泣きながら言ってくれた人間の友人は言ってくれた

助けを求めればすぐに駆けつけると言って、自分に背中を向けた


―――オハラは、負けてなんかいない


その一心で、涙を流しながらロビンは想いの全てを込めて叫ぶ


「まだ私が生きている!!!!」


「そのお前が死ぬんだろうがよ!!!!」


だがそれも目の前の憎い男に踏みにじられ、ロビンは唇を噛みしめることしかできない

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