紅の魔女 | ナノ




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「あの攻撃に人の感情なんてないわ!この"エニエス・ロビー"にある全てのものを焼き尽くす!建物も、人も!島そのものも……!!何もかも犠牲にして目的を達成する悪夢のような集中砲火!それが"バスターコール"よ!!20年前のオハラで何が起きたかあなたは知らないから……!!」


20年前のオハラも、21年前のカディアも……何も、残らなかった。何もかも焼き尽くされた

ギリ、とアリスは唇を噛みしめる

この海楼石の手錠さえなければ、今すぐこの男を殴りとばしていたというのに…!


「――あァ結構…政府にとってもそれだけのヤマだって事さ…!一時代をひっくり返す程の軍事力がかかってるんだ…!そのお前たちを奪い去ろうとするバカ共をより確実に葬り去る為ならば、例え兵士が何千人死のうとも…!栄えある未来の為の仕方のねェ犠牲といえる!!何より俺の出世もかかってるしなァ!!」


「人の命を何だと思ってるの!?」


「忘れてくれるな。CP9とは政府の暗躍機関。1000人の命を救う為に100人の死が必要ならば、我々は迷わずその場で100人殺してみせる。真の正義にゃ非情さも必要なのさ!そもそも侵入した海賊共を全く止められねェ、能無しの兵士共など死んだ方がマシなんだ、バカ野郎!!」


わっはっはっはと笑うスパンダムの子電伝虫が"通話中"であることに気づいたロビン

咄嗟に、ロビンは子電伝虫を通じてこの島にいる全員に向かって叫んだ


「全員島を離れて!!エニエス・ロビーに"バスターコール"がかかった!!島にいたら誰も助からないわ!!」


「余計な事言ってんじゃねェよ!!」


だがその直後、ロビンはスパンダムに殴り飛ばされて階段を転がり落ちていく


『……っ!』


両手を手錠によって自由を奪われているロビンは受け身を取ることもできない

酷い、と呟いた声は音になることはなかった


「くだらん事を口走りやがって…本当に海賊達が逃げちまったらおめェ一体どう責任とってくれんだよ」


頭から落ちていったロビンだったが、それでもすぐに立ちあがって先程自分がのぼってきた階段を走っておりていく


「待て、ニコ・ロビン!!」


スパンダムの声に振り向くこともしない


「来た道を戻ってもあるのは海賊共の死体だけだ!!いい加減にしろ!!」


それでも足を止めないロビンの後ろ姿に、スパンダムは背中に背負っていた剣を抜く

急所ははずせと告げて、剣をロビンに向けた


「"象牙突進(アイボリーダート)"!!」


刀身が伸び、鋭利な刀と化した象の鼻はまっすぐロビンへと向かっていく

壁が崩れる大きな音が響く


「ワハハハ…!逃がすかァ…ブァーカ女め…俺をナメんじゃねェよ…!!さァ、"魔女"と一緒にくぐろうぜ…!夢の扉を!!」


その表情は、とても正気の人間のものとは思えない醜悪なもので……最初から最後まで、自分の保身と昇進にしか頭にないことが容易に分かるものだった

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