紅の魔女 | ナノ




117


裁判所の入り口から、フランキーを呼ぶアニキ、という声がたくさん聞こえてくる

どうやらフランキー一家の連中も一緒にこのエニエス・ロビーに来て暴れているようだ

涙の再会を果たす一家だが、現実問題まだ跳ね橋はかかっておらずルフィたちが司法の塔に向かうことはできていない


「カティ・フラム!てめェ…よくも…俺の設計図をォ!!」


目の前で設計図を燃やされ、キレてしまったらしいスパンダムは両の手を前に突き出し…フランキーを、突き落とした

あまりの出来事に唖然とする一同だったが、そのすぐ後には麦わらの一味もまた裁判所の屋上から勢いよく飛び降りた

下に広がるのは滝で、落ちれば命はない

一体どうするのかと、固唾をのんで見守れば…すぐに、列車が下りかけの跳ね橋をすごい勢いで走ってくるのが見えた

落とされたフランキーと、麦わらのメンバーたちを乗せて―――飛んできたその海列車は、勢いよく司法の塔へと突っ込んできた


「………来た」


まさか本当にこの司法の塔に敵が踏み込まれるとは思っていなかったのか、スパンダムは呆然と呟く

だがすぐに我にかえり、ロビンの腕を乱暴に掴む

海楼石のせいで自由が奪われているロビンはそれに抵抗することはできない


「さァ、お前たちを解放するぞ、CP9!この司法の塔であいつらをギッタギタにしてしまえ!惨殺を許可する!ルッチ、お前はその"魔女"を連れて俺と来い!何をおいてもまず、俺の命を守れ!いいな!!」


ファンクフリード、と叫べばずっと大人しくしていた象が鳴き声をあげた

だが次の瞬間、体が変化していき――最終的には、1本の剣へとなった

それはゾウゾウの実を食べた"剣"であり、スパンダムの唯一の戦う術でもある


「さァ"正義の門"へ向かうぞ!!この女たちを取り返せるもんなら取り返してみろ麦わらァ!!」


来い、とばかりにルッチに腕を引かれるが、今のアリスに立ちあがるだけの体力は残されていない

ふらりと力なく倒れた体は、難なく彼の腕によって抱きとめられる


「……」


呼吸は荒く、意識は混濁しているのか包帯で覆われていない目は閉じられている

先程からずっと観察していたルッチは、彼女の体調が少しずつ悪化していることには当然気づいており、突然倒れられたというのに驚いた様子は全く見えない

海楼石が影響を与えているのは間違いないが……海楼石は能力者の能力を封じるものであって、意識を失うというのは普通であればあり得ない、が………

感情の見えない瞳でアリスを見つめて…いや観察していたのは数秒の間で、すぐに彼女を抱きかかえて肩で担ぎ、先を歩くスパンダムとロビンの後をゆっくりと歩いていく


『…ぅ……、』


歩くたびに感じる振動が苦しいのか、時々低く声がもれるのを耳にしながらもルッチはそれらを無視して歩く

"魔女"は夢と現の間を彷徨いながら、来るべき"その時"を、こみ上げてくる"それ"に耐えながら、ただ待った

―――"決壊"のトキは、もうすぐそこに…

頭の中で、冷静な自分の声が確かに聞こえてきた

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