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『"風刃"!!』
まだ幼さの残る少女の言葉と同時に、幾多もの鋭利な風の刃が生まれ、それらは多くの海兵たちを傷つけていく
「うわぁぁっ!な、何だ!?」
「あのガキ…悪魔の実の能力者か!?」
突然の攻撃に驚く兵士たち
しかし、驚いたのはサウロも一緒だった
「アリス!?お前、何でここに…!!」
『私達は受けた恩を忘れない…友を裏切ったりしない!それが私達"紅の一族"の誇り!!私も一緒に戦う!!』
紅の十字架を持つ瞳は一点の曇りもない
サウロが暴れている場所から少し離れた場所、そこに点在しているいくつもの海軍艦
それを見つめ、集中するように大きく深呼吸する
『……必ず、守る…』
今度こそ、必ず守ってみせる
風が集まり、それは渦を巻くように少しずつ…少しずつ、形作られていく
小さな渦は徐々に加速していき、それは竜巻へと変化していった
『"台風(ハリケーン)"…!!』
海の中心で突如発生したその竜巻は、周囲の軍艦を呑み込んでいく
「…すごい…」
その様子を見ていたロビンの口から、無意識のうちに呟きがこぼれた
たった1人であっという間に軍艦をいくつも沈めてしまったアリス
もしかしたら、このままアリスとサウロが海軍を全部倒してしまうのではないか―――そんな希望が膨らむぐらい、アリスの強さは凄かった
だが―――すぐに、その希望は打ち砕かれる
「――"アイス塊"…"両棘矛(パルチザン)"」
『!?』
突然いくつもの矛の形をした氷の塊が、アリスを襲った
予想だにしてなかったそれに、回避することができず……いくつかが彼女の体を傷つけていく
『……これ、は…』
いくつもの傷を負った状態で、アリスは呟く
この、氷を使った攻撃には見覚えがあった
いや、見覚えがあるどころではない……身を持って、これを体験したことがあった
「……まさかお前がまだこんなところにいるとはな…いくら"偉大なる航路"を探しまわってもいないわけだ」
『―――クザン…!!!』
1年前、母を殺し島民を殺した男の名前を、アリスは深い憎しみを込めた声で呟いた
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