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『あ…っ』
気づいた時にはもう、"風"でどうにかなる段階ではなかった
反射的にロビンを強く抱きしめて瞳を閉じたが―――予測した大きな衝撃は訪れることはなかった
ズドォォォンッ
――それは、サウロが守ってくれたから
砲弾はサウロの顔に直撃したが、その直前に彼は空いていた左手でその衝撃から守ってくれたのだ
『サウロ…!』
いくら巨人とはいえ砲弾が顔面に直撃すればタダではすまない
血を流すサウロの顔を見て悲鳴を漏らすアリスと、言葉もでないロビン
「…すまんロビン、アリス…びっくりさせたでな…ちょっと待っとれ」
歪ながらも笑みを浮かべているサウロによって、2人は地面に降ろされる
サウロは、先程砲弾を撃ってきた船を睨みつける
「アレか…あんな岸から…2人が傷ついたらどうすんだで……!!」
そのままサウロは軍艦へと近づき……その巨大な軍艦を、抱え上げた
巨人とはいえ、軍艦一隻を持ちあげるのは容易ではない
「……何が正義か今はわからんで…ワシはただ友達を守る…!!」
雄叫びと共に船は投げ飛ばされ、大破される
その戦闘力はバカにはならず、多くの人間が逃げ惑っているのが見えた
『サウロ…!!』
「サウロ――――!!」
だがいくら巨人とはいえ、何隻もの軍艦の集中砲火を浴びせられればタダではすまない
サウロが戦う姿をただジッと見つめていたアリスだったが、ふいに覚悟を決めたように大きく息を吸った
『……ロビン、あなたは今のうちに避難船へ行って逃げて』
「アリス!?」
『私はサウロと一緒に戦う…ロビンが逃げるまでの時間は稼げるはずだから……大丈夫、死ぬつもりは全くない』
呆然と自分を見上げるロビンの瞳と、覚悟を決めた静かなアリスの瞳がぶつかる
『いつか……この広い海のどこかで会おうね、ロビン。私はいつでもあなたのことを想ってるから……あなたが困っていたら、私は必ず助けてあげるから…』
「アリス…やだよ、アリスまでどっか行っちゃうの…っ!?」
『……必ずまた会える…うぅん、会おう。約束、ね』
涙を浮かべるロビンに、最後とばかりに笑みを浮かべると……1人戦っているサウロのもとへと駆けだした
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