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「…この子たちをお願い、サウロ!!」
母親の顔をしたオルビアは、アリスとロビンをサウロに託す
ロビンは嫌だと涙を流すが……オルビアの意志は固い
彼女はここで……"オハラの学者"として、そして"母親"としてここに残るつもりなのだ
「お母さん!!離れたくないよ!やっと会えたのに…私もここにいるっ!」
「ロビン、"オハラ"の学者ならよく知ってる筈よ。"歴史"は、人の財産。あなた達がこれから生きる未来を、きっと照らしてくれる」
真っ直ぐ、ロビンの瞳を見つめながらオルビアは語る
「だけど過去から受け取った歴史は、次の時代へ引き渡さなっくちゃ消えていくの。"オハラ"は歴史を暴きたいんじゃない…過去の声を受け止めて守りたかっただけ…!!私達の研究はここで終わりになるけど――たとえこの"オハラ"が滅びても、あなた達の生きる未来を!私達が諦めるわけにはいかないっ!!」
わからない、と泣くロビンにいつかわかると言葉を返すオルビア
サウロの大きな手のひらに乗り、アリスは真っ直ぐ彼女を見つめる
その瞳に涙こそ浮かんでいないものの、深い悲しみが見える
――"母"という生き物は、本当に強い
自身の子が生きる未来を守るために、自分の命を犠牲にすることを躊躇うことをしないのだ
……私も…いつか、彼女たちの気持ちが分かる日がくるのだろうか…?
一度完全に失われた"家族"を、また得られる日が来るのだろうか……
「さァ行って、サウロ!!」
オルビアの固い意志を確認し、サウロは泣き叫ぶロビンを自身の掌にのせる
「――生きて!!ロビン!!!」
それは、願い
幸せに、とか楽しく、だなんて言わない――ただただ、生きて欲しい
自分を"お母さん"と呼んでくれた、たった一人の大事な娘に願うのは、"生きる"こと
「お母さん―――ーっ!!」
サウロが走れば走る程、オルビアや博士の姿は小さくなっていく
どんどん小さくなって―――そして、最後には見えなくなる
巨人であるサウロは海軍からすればいいマトだろう
遠慮なく砲弾が撃ち込まれるなかを、サウロはアリスとロビンを抱えて走りぬけていく
「誇れ、ロビン!!お前の母ちゃん、立派だで!!オハラは立派だでよ!!」
火の海を通り抜けていく
「この島の歴史は!いつかお前たちが語り継げ!ロビン、アリス!!オハラは世界と戦ったんだでよ!!!」
その言葉と同時に……避けきれない大砲の弾が、こちらに飛んできた
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