紅の魔女 | ナノ




106


その優しさに背中をおされ、ロビンはゆっくりと母親の傍へと歩いて行く

そっと手を繋ぎ、6年ぶりに"母親"と会話をしているロビンを、右目で見つめる

――尋常ではない痛みに、必死に耐えながら


『……っ…』


声を出さないのはせめてもの抵抗だ

この痛みはまるで火の棒を目におしつけられているような……そんな、耐えがたい激痛

――だが何故突然"左目"が痛んだ?

もう少しで邪魔な人間を殺せたというのに…1人逃げてしまったではないか

一族に伝わるこのチカラ――…今思えば、ここまで大きなチカラを使ったのは初めてではないだろうか

いつも、母が前に立ち、"風"を自由に操っていた

背中に庇われていた自分が出る幕なんて、それ程全くないと感じる程に

だが―――そのいつも守ってくれていた母は、もういない


『……、っ…』


徐々に痛みが引いていき、我慢できる程度まで治まった時アリスはゆっくりと立ち上がった

若干ふらつくが、すぐに真っ直ぐと立ち抱き合っているオルビアとロビンの傍へと歩みよる


『……ロビン…オルビアさん……』


「アリス…!!」


涙を流しながらオルビアに抱きついていたロビンに小さく笑う


『良かったねロビン…お母さんと会えて』


「…あなた、その目……まさか、"血の十字架(ブラッディ・クロス)"…!?」


優秀な考古学者であるオルビアは、左目に浮かぶコレについても知っているようで、驚いたようにコレを凝視している


『知ってるんですね、コレ。私達一族が受け継ぐ"証"を……いえ、今はそんなことはどうだっていい…早く2人で逃げてください』


火の勢いは衰える様子がなく、図書館は徐々に火に包まれていく

この島に残っていては必ず死んでしまう

幸いにも避難船が出ており、それに何とかしてもぐりこませてしまえば生きてこの島から出ることができる

重傷を負っているクローバー博士もそれに同調する


「アリスの言う通り…ここでぐずぐずしてはいかん…早く逃げるんだ!」


だがその時――突然、巨人がこの場に現れクローバー博士は目を見開いた


「ロビン、アリス!!ここにおったか!!探したでよ!!」


「サウロ!!」


『サウロ…なぜあなたが…』


オルビアとも知り合いのようで、2人の会話と様子からサウロは海軍の…今回の"バスターコール"の関係者であったことを悟る

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