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「…どうしたロビン」
勢いよく走ってきたのか、肩で息をしながら立っていたのは、ロビンだった
「…私の、お母さん……ここに来た…!?」
「!?」
何故ロビンがそのことを知っているのか、全く分からなかったが本当のことを言うわけにはいかない
「……、何を言い出すロビン……お前の母親がこの"オハラ"におるわけがなかろう」
『…どうしたの?急に…』
オルビアの想いを無視するわけにはいかない
何もなかったかのような表情をつくり、アリスはロビンに話しかける
「う…うぅん……、ってあれ?アリス、その格好…」
ロビンはアリスの初めて見る姿に目をしばたかせる
いや、初めてではない――1年前、初めて会った時と似ている格好だ
刀を背負い、銃を腰に下げ―――顔を隠すように、フードをふかく被っているアリス
それに嫌な予感がするも、それよりも大事なことを思い出す
「そうだ…大変なの!"海軍の軍艦"がこの島に来るって!!この島の学者をみんな捕まえに……!!」
『……!?』
――軍艦…?
ロビンの言葉にひっかかったのはアリスだけのようで、博士はそれ程の驚きを見せなかった
「町で騒ぎでも起きておるのか…?その事なら"軍艦"ではなく、"政府"の船がな、今この島へ入ってきたらしい…恐らく今までより厳重な調査になる」
――"政府の船"ではなく、"海軍の軍艦"がこの島に集結しているのであれば……それは、"カディア"と同じ運命を辿るという意味に他ならない
「いいかロビン…お前は政府の者たちが来ようとも、自分が考古学者である事は絶対に明かしてはならん。お前程小さければ…誰も考古学者だとは考えん。アリスと一緒にいるんだぞ、わかったな」
『……っ…逃げ、なきゃ…』
「――アリス?」
小さく聞こえてきた、友達の声にロビンは視線をクローバー博士から彼女に移す
顔色は蒼白で、小さく震えているアリスの姿がそこにはあり――いつもとは違いすぎるその姿に首を傾げる
"政府の調査船"が来ることぐらいで、何故彼女はそこまで怯える必要があるのか――まだロビンは知らない
バンッ
「作業を止めろ!!両手を上げて全員外へ!!」
銃を持って武装した政府の人間が室内に入ってきてからは、あっという間だった
"歴史の本文"解読の疑いがかけられているオハラの研究所は徹底的に荒らしつくされ、学者たちは無理やり外へと連れ出される
ロビンはそれに怯えながらも、それ以上に怯えて……いや、恐怖しているアリスを連れて、外へと出ていった
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