悲しき詩 | ナノ




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[ラ、ラビさん…そんな犬じゃねーんスから…]


[イーから見てろよチャオジー。飢えたアレンなら百パースッ飛んでくっから!ごはんだぞー!!]


方舟内のどこかから聞こえてくるその声は、とても聞き覚えのある声で

ひたすら食べ物の名前を連呼している声の主が、パッと映像として映し出された


[ごはんだぞアレン!!ごぉーはぁーんーッッ!!]


「!!」


そこに映し出されたのは、あの時奈落の底へと落ちて行ったラビとチャオジーで……死んだと思っていた仲間の無事な姿に言葉につまるアレンとリナリー


「ほぉ街ごと戻ってきたか。まぁ別に次元の狭間に吸収されただけで死んでたわけじゃねェしな]


"死んだ"と確かに言われたアレンはその聞いていない事実に抗議するも、文句はあっさりと一蹴される


[みたらしみたらしみたらし!!]


とにかく思いつく限りの食べ物の名前を連呼し続けているラビ、それを恥ずかしそうに見ているチャオジーの他に意識のないツナとクローム、そしてユミの姿も見える

少し経てばクロウリーを担いだ神田も合流し――皆、生きていることが判明した


[コラーッ!出てこいってのモヤシー!!]


「誰がモヤシか、バカラビーッッ!!」


聞き逃せない悪口に反射的に言い返せば、今度は音声が向こうにも届いたようで、皆一様に反応を示す


[!?]


[うおっ、アレン!?]


[チッ…モヤシの声が空から…]


「アレンです!バ神田!!」


[エリ…ア…デ……]


[あっ、クロちゃん喋った!!]


[沢田さんたちはまだ目が覚めませんね…]


[気絶してるだけだ、時期目を覚ますだろ]


好き勝手喋っている仲間たちの声に、リナリーの瞳から涙が溢れる

今まで張りつめていた糸がきれたのだろう…ポロポロと零れる涙が止まる気配はない


「よかった…っ」


「……」


その様子を一歩引いた場所から眺めていたクロス

ソファに腰かけ眠っている愛結の髪をそっと一房つかむ

戦いは一先ず終わりを告げたが、まだ全て終わったわけではない

むしろ、これから始まるだろう、この少女にとっては


――髪はもう結ぶなと言ったはずだが、な…


言葉は煙草の煙と共に小さく吐き出された







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