悲しき詩 | ナノ




157 誰にも見せない涙




「卵が元に戻ってく…!」


消滅しかけていた卵が逆再生するかのように元あった形に戻っていくのをただ見つめるリナリー


「転送を止めたんで消滅プログラムも解除されたか。ギリギリだったな。ま、これで生成工場は転送不完全で伯爵の元に届かんだろう。師弟の勝利だアレン、はっはっはっ!」


しーん…

通信状況は良好なはずなのにアレンからの返事は返ってこない

リナリーが心配して呼びかけても結果は同じだった


「…アレン。お前のいる"部屋"に行くからこっちにドアを出せ。――お前が望めば開く」


数秒待てば何もない空間に突如としてドアが現れる

そのドアを当たり前のように開けるクロスを、リナリーは訝しげに見つめていた


「(方舟のことよく知ってる…)」










がちゃりと軽い音を立てて開かれた扉の先で見えたのは、ちょうど意識のない愛結をソファに横たわらせているアレンの姿だtった


「リナリー…よかった、無事で」


「……、アレン…くん?」


こちらに気付き声をかけたアレンの表情に、リナリーは小さな違和感を感じるも、場を繋げるように言葉を続ける


「崩壊が止まったの。ピアノの音と歌がね……アレンくんと、あの子が…?」


あの子、とチラリと愛結に視線を向けるリナリーの表情は決して明るいものではない

決して許したわけではないのだと、まだ受け入れれないのだとその表情は物語っている

それを察したアレンは表情を曇らせ小さく頷くが、クロスを視界に入れた途端表情を一変させる

険しい目で睨まれているというのに、呑気に煙草を吸うクロス


「ギリギリなところで愛結が持たなかったのは運がなかったな。アイツが万全の状態だったらあんな危ない橋渡ことなかったんだが」


「……」


「お前が何を言いたいのか分かってる。コワイ顔すんなよ」


「…どうして……っ」


聞きたいことはそれこそ山のようにあるが、何よりも先に聞きたいことがあった


「あの、楽譜は―――」


その問いかけを口にした時――とてつもなく大きな声が、それを阻害した


[ごはんですよ――ッッ!!!]


キィーン…




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