悲しき詩 | ナノ




152 願いをのせて




【"アレン"、オレノティムキャンピー…フタツガ"奏者ノ資格"。"愛結"ガ"詩者ノ資格"…】


「ソウシャ?シイシャ…?なんのことだ…ティムキャンピーは師匠のものだ、お前のじゃない!何者だお前…!」


聞き慣れない言葉に不信感も露わにするアレン

ピガガ、と耳元で耳障りな金属音がした、と感じた次の瞬間…アレンは悶絶することとなる


[馬っっ鹿弟子ぃぃぃ!!!]


キィィィン


「…っっ!!」


付けていた無線機から突然響いたクロスの大声に、アレンは言葉もなく蹲る


[とっとと転送を止めろオラァ!!]


[アレンくん大丈夫?聞こえる??]


もといた生成工場に残っているクロスとリナリーの声に、まだ無事なことを確認できて安堵する


[そこにピアノはないか!?]


「えっはい、ありますが…」


[それが舟を動かす"心臓"になる。―――弾け!]


―――"弾け"?


「…あの?僕ピアノは生まれてこのかた一度も…」


昔…ピエロをやっていた頃に笛を吹いていた程度しか楽器に触れた事ないアレンは無理だと訴えるが…そんなこと、この男には全く関係のないことで


[ティムが楽譜を持ってる]


「ちょっと!!楽譜の読み方なんて知りませんッッ!!」


[――…―借金増えんのとどっちがいい]


「どっちも無理です!!!」


しれっと無理難題をぶつけてくるクロスに抗議するが、通信機に雑音が混ざる


[そ…すれば……お…の意の……に………]


「師匠!?」


プツリと切れた無線機はいくら呼びかけてももう機械音しか聞こえない

彼らに何かあったのか――残された2人の身を案じていると、今まで黙っていた影が、言葉を発する


【"アレン"ガ弾ク】


「ど、どうして僕なんだ…!?」


そう、別に自分でなくてもいいはずなのだ。それこそこの方舟に詳しいクロスのほうが良いはずなのに、何故自分が…自分たちが選ばれたのか


【"愛結"ガ詩ウ――フタリノ楽譜ダカラ】


ティムの口から現れた"楽譜"に、アレンは驚き目を見開いた







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