悲しき詩 | ナノ




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「えっ…こ、ここは…なんだこれ、死体…!?」


目を開けるとそこにはたくさんの死体が転がっており、先程とは違う景色にアレンとリナリーは驚く

クロスはそれに構うことなく、何も知らない2人に説明する


「この部屋…生成工場の番人共だ」


「生成工場!?ここが?」


そう呟くアレンの後ろに鎮座しているのは、巨大な…タマゴに似た装置


「そのでかい玉が伯爵が造ったアクマの魔道式ボディの"卵"だ。ブッ壊してぇんだが結界が張られてて解除(ハガ)すのに時間が足りん」


ドクドクと息づくそれに目を奪われるアレンだったが、その卵の上部から徐々に、少しずつ消滅していっていることに気付く


「ここが方舟転送の最期の部屋だ。卵が転送され消えた瞬間、俺たちもろとも方舟は消滅する」


現在進行形で消えていく卵を見れば、残された時間は決して多くない

最後まで残るはずのこの場所も崩壊の時刻を迎えたのか、大きな地響きが何度も響く


「要は卵を奪えばいい。方舟を起動させて転送を止めれば卵は新しい方舟に届かない」


「こんな得体の知れない舟どうやって!?」


「元帥…何か知ってるんですか?方舟を動かせる方法を…!?」


あまりにも方舟に詳しいクロスにリナリーは不審げな様子で問うも、それに対して答えることはなく、ただ一言だけ口にする


「俺じゃない、"お前"がやるんだ、アレン。愛結と一緒に」


術式で卵の転送速度を少しだけ遅らせることに成功したクロスはアレンを急かずが、アレン本人は全く意味が理解できず戸惑うしかできない


「待って下さい!何言ってるか全然分かりません師匠!!」


「"とっておき"の部屋を開ける。ティムに従え」


説明を求めるが、逆に無理やり愛結を渡されてしまう

この騒ぎでも一度も目を覚まさず、ずっと眠り続けている愛結


「"向こう"についたら愛結を起こせ。そうすりゃ分かる」


絶対にだ、と念を押すクロスに文句を言おうとするアレンだったが、ティムに愛結ごと別の空間に送られてしまいそれは叶わない


「お前らにしかできんからだ…馬鹿弟子」


もうアレンに聞こえないだろうと思いつつも、クロスは小さく呟く


ドドドッ


また、大きく地面が崩れた







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