148 資格の持ち主
「会うのは何年ぶりでしょうかネェv」
「さぁな。デブと会った日なんていちいち日記に記していない」
「マvその言い方は〜我輩とよく会ってるように聞こえますネェvかくれんぼ〜のクロスちゃぁ〜ンv」
ティキ・ミックと紅蓮を肩に担いだまま、千年公はくねくねと体を揺らす
「そこのご婦人の小賢しい能力は我輩達の目から貴方を消してしまいますからネェv借金取りからもそうやって逃げてるんでしょウ?v」
「はっはっはっ」
バンッ!
「貴様のトロい喋りに付き合う気分じゃない。冷やかしなら出ていけ」
足場としていた岩を粉々にされ、千年公は軽やかに地面に降り立つ
「"出ていけ"?これはこれハ!ここは我輩の方舟ですがねェ?そうそう、そろそろその子も返してもらっていいでしょうカv」
「愛結を?冗談はその顔だけにしておけ。お前にとっちゃ"どちらか1人"いれば十分なはずだが?それに、お前は捨てたんだろ、この方舟は江戸から飛び立つ翼を奪われたアヒル舟。"14番目"…ノアを裏切った男の呪いがかかった日からな…」
"14番目"―――その言葉をクロスが口にした途端、千年公の纏う雰囲気が変貌した
「やはり…貴方でしたカvあの男、"14番目"に資格を与えられた"奏者"ハv」
血走った目で、クロスを見つめる
「何をしに来たのでス?vこの舟を奪いに来たのなら遅すぎましたネェvすでにこの舟の"心臓"は新しい方舟に渡しましタv"心臓"がなくては舟は操れなイv奏者であっても何もできませンvそれはいくら"その子"がいても同じですヨvこの子たちだけでは"資格"が足りませンv」
殺気の込められた視線を千年公にぶつけるのは、傷だらけのアレン
「愚かですねェv二度と出られないとも知らずニ…フフvこの方舟は最後にエクソシストの血を吸う柩となるのですヨvホッホッホッv」
ギリッと奥歯を噛みしめる音が聞こえ、リナリーは隣にいるはずの彼を見る
もう限界をとっくに超えているはずなのに、無理にイノセンスを発動させているアレンを見てリナリーは必死に止めようとする
「だっだめ!これ以上は…体の傷が…っ!アレンくん!!」
だがリナリーの声は今のアレンに届かない
流れ落ちる血液に構うことなく、左腕を剣に変え真っ直ぐに伯爵の元へと斬りかかった
「伯爵ぅぅぅ!!!」
「!」
「アレンくん…っやめて…っ!!」
ドン、と地面が大きく割れて2つの剣が交わる
ギギギギ
「我輩の剣…!?」
僅かに驚いたようにアレンの剣を見るが、その持ち主の表情を見て、心の底から楽しげに笑う
「"憎悪"…!いい瞳だアレン・ウォ〜カァ〜v」
剣を振り払い、アレンの攻撃を受け流して崩れゆく方舟の瓦礫に混じって奈落の底へと落ちていく伯爵
それを躊躇することなく千年公を追って落ちていくアレンだったが……彼の意思に反して、アレンの手が勝手に剣を壁に突き刺し、その落下は止められてしまう
"脳傀儡(カルテ・ガルテ)"――マリアの能力だ
「やめろ。仲間に死なれて頭に血がのぼったか、馬鹿弟子」
憎しみで伯爵と戦うな
仲間を失い、どうしようもない感情を持て余すも――納得できず、アレンはただただ唇を噛みしめた
。
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