悲しき詩 | ナノ




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「…おい、愛結。起きろ」


そしてクロスは1人残した愛結のもとに向かい、頬を軽く叩いて呼びかけるも反応は返ってこない

腹部からの出血は多く、血溜まりができているこの状態で意識を保てというほうが無理だろう

クロスは小さく舌打ちすると、傷口にさわらないようそっと、意識のない愛結を抱き上げる


「ったく…面倒なことになったな…」


愛結が瀕死の状態になっているのは予想外だったのか、思慮の色が顔に浮かんでいる


「まぁいい、まずは"お前"からだ。こんな崩壊寸前の舟でまだ騒いでっからどうしたのかと思いきや…ノアの一族ね…正気を失ってるな」


吹き飛ばされた衝撃から立ち直ったティキ・ミックを見据える


「エ…グゾ…ジズ…ド…」


「ノアにのまれたか…一族の名が泣くぜ?」


クロスは棺に巻きつけていた鎖を術式と共に外す


「オン アバタ ウラ マサラカト 導式解印(オン・ガタル)!!」


聖母ノ柩…限定解除!

閉じられていた棺が開き――現れたのは、1人の女性

特徴的な仮面をつけドレスを身に纏った女性は、唯一見えるその口を開き―――歌を、歌った


"聖母ノ加護(マグダラ・カーテン)"


「これ…讃美歌…?」


ツナの容態を見ていたアレンが、静かにするよう人差し指を口にあてる

歌が7人を包み――突如、ティキ・ミックの視界から消えた


「!!?」


突然"消えた"ことに驚き、周囲を見渡すティキ・ミック


「マリア、愛結を頼む」


細い腕のどこにそんな力があるのか、マリアは微笑みを浮かべ少女を受け取る


「さて、ガキ共には"ご退席"してもらったぜ。いいだろ、別に。なぁ?」


そう言うと、腰に下げていた銃の引き金を躊躇なく引いた





「――"聖母ノ加護"。師匠の対アクマ武器の能力で敵の脳から視覚に幻術をかけてガードする技です」


小声でティキの視界から消えたカラクリを説明するアレン

生きているみたいだと感心しているリナリーの言葉を、言いづらそうにアレンは訂正する


「……あれは人形じゃなく人の屍ですよ」


「おい、それって…禁術じゃ…!?」


「師匠は魔術で寄生型イノセンスの女性の屍を"異例"に所持してるんです。マリアは師匠の命令だけを聞く。そして、師匠自身が持つ装備型対アクマ銃…"断罪者(ジャッジメント)"」


強力な威力を持つ弾丸が、ティキ・ミックを容赦なく襲う

クロス・マリアン元帥はエクソシストの中でも特殊な人で、"聖母の棺"と"断罪者"という2つの対アクマ武器を持つエクソシストなのだ


「アーメン」


…これほど"神父"という言葉が似合わない男もいないだろう




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