145
「なんだこの汚ねェガキは」
アレンの足を掴んで落下を止めたのは、骸骨男
厳重に鎖の巻かれた棺に乗って、宙を浮いていた
「少しは見れるようになったかと思ったが…いや汚ェ。拾った時と全然変わらんな馬鹿弟子」
見覚えのない風貌ではあったが…アレンは足を掴まれた逆さまの状態で良く見える、黒い棺が非常に見おぼえのあるモノだということにもちろん気付いていた
黒い棺―――否、対アクマ武器"聖母ノ棺(グレイヴ・オブ・マリア)"
この対アクマ武器を持つ人物は一人しかいない
サァーと顔色が悪くなったのは、決して逆さまに吊るされているだけではないだろう
「お…おひさし…ぶり…です」
「なんだその嬉しそうな顔は」
おとそうか?そう言い放つ骸骨男の仮面が、変化して本来の顔が露わになっていく
長い赤髪を風になびかせるこの眼鏡をかけた男はティムの持ち主であり、アレンにとってもとぉぉっても馴染の深い人物で
到着した地面に無造作にアレンを落とすその姿に、エクソシストたちは驚き目を見張る
「マジ……?」
一人、チャオジーだけは不思議そうにしている中、リナリーは茫然と、いるはずのない男の名前を口にした
「クロス…元帥……」
そう、アレンの師匠でありずっとリナリーらが探していたクロス・マリアン元帥その人だった
「師匠…」
呆然と、突然現れたクロスを驚き見上げるアレン
そんなアレンを…いや、正確に言えばアレンの左腕をジロリと見る
「やっとまともな発動ができるようになったみたいだな」
「えっ…?」
「それにしてもボロボロだな…ホラ」
気遣うようにして差し出されたその手を、アレンは信じられないものを見るような目で見つめる
クロスに受けた数々の仕打ちが脳裏を過ぎり――"あの"師匠が差し出した手に、あまりの恐怖に逃げ出したくなる
「あっは、はいっすみませ、ん?」
だが反射的にその手をとろうとしたアレンだったが、差し出されたはずの手はアレンの服を掴んでおり――理解が追いついていない弟子を、思いっきり投げ飛ばした
「うわああぁぁ!!」
「えっ…」
投げ飛ばされた先にいたリナリーとチャオジーは突然頭から落ちてきたアレンに驚く
「汚ねェんだよ馬鹿弟子がッ」
今まで必死に戦ってきた弟子にかける言葉とは思えない
その酷い理不尽さに初対面のチャオジーは目を白黒させているが、その理不尽の矛先は弟子のアレンだけではない
「オラ貴様もあっちいけ。美しいもんは傍においてやるが汚ェのは(女以外)俺に近づくな…あぁ、そこで倒れてる奴らも連れていけよ、目障りだ」
「酷い言われようさ…」
そこで倒れてる奴ら、というのはツナとクローム、そしてユミであり…ラビは3人を担いでふらふらになりながらも何とかアレンたちと合流する
。
[ 314/461 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]