144 迫るカウンドダウン
殴り飛ばされ、勢いよく壁に叩きつけられたクロームはピクリとも動かない
最悪骨が折れてしまっているだろう衝撃に、つい最近まで普通の女の子だった少女に耐えれるわけがなかった
「、くろー、っ!?」
傷つけられた仲間のもとへ駆け寄ろうとしたツナだったが…突如感じた激痛に、思わずその場に膝をついてしまう
唐突なそれにラビが声をかけようとするが…ツナが手で押さえる脇腹から流れ出る血に目を見開く
「おい沢田、その傷…!」
「っ、きず、が…っ」
――"愛結"に斬られた傷が、戻ってきた
脂汗を滲ませ、荒い呼吸を繰り返すツナの脳裏に点滅するのは危険信号
これは彼女に先送りしてもらった傷――それが何故、今このタイミングで戻ってきたのか…
大怪我をしつつも愛結が戻ってきてくれて、これからだと言う時に、まさかの戦線離脱なんて…!
「く、そ…っ」
いまだ目覚めない愛結を霞む視界で捉えると、彼女の近くにティキ・ミックが降り立つのが見えた
邪魔者はいなくなったとばかりにニヤリと笑みを浮かべると、その手を彼女に伸ばす
「っ愛結ちゃんに、さわるな…!!」
痛みを凌駕する怒りに、ティキ・ミックを睨みつけ叫ぶ
触れることは許さない――その気迫はアレンやラビも驚いた程だった
だがそれが限界だったようで、ツナの視界は急速に狭まっていき……そのまま、地面に倒れてしまう
「く、そ…っ」
死ぬ気の炎も消え、悔しさに拳を握ったのを最後に――ツナの意識は、そこで途切れてしまった
ツナとクロームがいなくなった今、愛結の前に立ちふさがる障害は何もなくなった
今度こそとばかりに愛結に手を伸ばしたティキ・ミックだったが……それもまた、別方向からの妨害により防がれてしまう
ビシィッ
その手に巻き付いたのは、白い布
「間違えるな…あなたの相手はこっちだ、愛結には指一本触れさせませんよ…」
満身創痍の状態でも戦う意思は折れていない
にやりと、無理やり浮かべた笑み
「言ってたでしょ確か…僕を、殺したいんじゃなかったんですか…?」
その挑発に乗ったティキ・ミックが、愛結から離れると一直線にアレンへと向かっていく
リナリーに悲鳴のような声で呼ばれるのを聞きながら、アレンは退魔の剣を構える
「来い…っ!ここからもう…生きて出られないとしても命が尽きるまで戦ってやる…っ!マナとの約束だ!」
そう覚悟を決めた時――アレンの足元に突然大きな紋様らしきものが浮かび上がり……地面が、崩れた
ドゴォ
アレンに迫っていたティキ・ミックは大きく吹き飛ばされ、アレンは崩れた地面へと吸い込まれていく
「…っ!うわああぁっ!!」
掴まれるものもなく、ただ落ちていくアレンだったが……ふいに、その落下は止まった
。
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