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ガッシャーンッ
「ボス…っ!!」
「そ、そんな…エクソシスト様が……」
砂埃がおさまった場所は瓦礫が山のように積み上がっており……そこにいるはずの3人の姿は、見えない
その事実に呆然としていると、今まで大人しくしていたティキ・ミックが突然、リナリーの首を絞めていた手を離した
「クックック…」
苦しげに咳をするリナリーに対する興味は失われたのか視線を向けることもなく、ティキ・ミックは楽しげに哂う
その"狂気"に体が強張るも、チャオジーは必死に体を動かし未だ咳き込んでいるリナリーを抱えて彼との距離を取る
何が楽しいのか、大きな声で笑っている彼を前に、クロームは震える手で三叉槍を握りしめる
チャオジーやリナリーは戦うことができないのだ、自分がやらねば――痛みで動けぬ体だが、戦えるのは自分しかもう、いないのだから
「――ハハハハ、」
笑い始めが突然なら、止まったのもまた突然だった
耳障りな笑い声をピタリと止め、だが口許の笑みは残したまま――ティキ・ミックは素早い動作で衝撃波をクロームらの頭上へと放った
ドォン、と鈍い音を立てて崩れる建物――ツナたちの時と同じことが、人為的に行われようとしていた
崩れた建物は瓦礫と化し、そのまま重力に従い真っ直ぐ、クロームらの頭上に向かって落ちてくる
「――ッ!!」
もう、だめだ
どうすることもできない光景に諦め、腰が抜けて座り込んだクロームは固く目を瞑って衝撃に怯える
ドゴォンッ
瓦礫が地面に叩きつけられた音が散乱する、が
「うあああぁぁああぁぁ!!!」――予想していた衝撃は感じず、恐る恐る目を開けると、見えたのは大きな瓦礫を持ちあげているチャオジーの後ろ姿だった
「ギギギギギギ…ギッ…!」
「チャ、チャオジー…!?」
チャオジーは間違いなく普通の人間で、こんな人外染みた力なんてなかったはずなのに――リナリーのその疑問は、チャオジーの手元が強く光っていることに気付いたことで、一つの可能性に思い当たる
あの光は恐らく、イノセンスによるもの。どこから反応しているかは分からないが――
今は、それを考えている余裕はない
ググググ…
「うがあぁ…っアニタ様マホジャ様……っみんなぁぁ―――っ!!」
無我夢中で、必死に重たい瓦礫を持ちあげ続けるチャオジー
それを嘲うかのように、目の前には絶望という濃い闇を纏ったティキ・ミックがこちらを見下ろしている
―――状況は、何も好転していない
ニタリと口許を歪め笑うティキ・ミックが、ゆっくりとこちらに向かって手を伸ばした、時
――――みんな……「、え…?」
か細い、小さなそれは、聞き覚えのある声で――音を感知したのと同時に、クロームの視界は突然黒に染まった
。
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