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――アレンは深く、深呼吸をする
胸がざわめき、吸う息はひどく冷たい
――ティキ・ミックの内のノアは、破壊したはずなのに…
今、アレンの目の前に立つのはティキであるはずなのに……"ティキ"ではなかった
眩暈がする程濃い闇を身に纏ったと思った直後、その姿は黒騎士のようなものに変貌していた
その禍々しい程の圧迫感――逃げたいと一瞬でも思ってしまった自分を叱咤し、アレンは退魔の剣をその頭上から振り下ろした
やらなきゃやられる――無意識のうちに体が動いていた
「はああぁぁ!!」
勢いよく振り下ろした剣だったが、それは地面を削っただけでティキ・ミックに当たることはなかった
「(消えた…!?どこに…?)」
完全に姿を見失ったアレンに、容赦ない攻撃が当たった
ドォンッ
「…がっ……」
ガガガガッ
恐ろしい程の力とスピード
その人間離れした攻撃に反撃することもできず、アレンは必死に剣で受け流していく
「、しまっ…!?」
だがそれも長くは続かず、一瞬の隙を突かれ思いっきり壁に叩きつけられて息が詰まる
まさに防戦一方、手も足も出ないといった様子のアレンに、容赦なくティキの拳が向けられたが――それが彼に当たることはなかった
「…っティキ・ミックさ……?」
「、これは……」
間一髪のところで助けに入ったのは、イノセンスを発動させたツナとラビだった
2人とも、変わり果てたティキのその姿に驚きを隠せない
「アレン、しっかりしろ!」
ラビは傷つき倒れているアレンを抱き起し、ツナは目の前のティキ・ミックから目を逸らさずに、そんな2人の横に並び立つ
「ラビ…ツナ……」
泣きそうな声
「扉…が……っ!」
その言葉にハッと周囲を見渡せば――壊れた、ロードの扉が目に入り言葉を失う
そう、アレンらが上から引きずり降ろされた時――同時に、ロードの扉までもが壊されていたのだ
もう……この滅びゆく方舟から出る手段が、なくなったということだ
「ぐくくくっ…ひははははは!!!」絶望的な状況下、ティキ・ミックの笑い声がよく響いた
絶望への階段(希望が見えない戦い)
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