悲しき詩 | ナノ




128 消えない不安




一番最初にその変化に気付いたのは、ツナだった


「…!アレン、ラビが…」


ハコの中に閉じ込められていたラビが、微かに動いたのだ

ちょうど位置的にラビが見えないアレンに声をかけたのと同時に、ハコから出たラビがアレンの後ろの降り立った

だが……明らかに、様子がおかしかった


「ラ……ラビ……?」


「アレン…悲しいお知らせが届いたよぉ―――"ラビ"のココロが今、死んじゃったみたい」


目元に不思議な紋様を浮かび上がらせたラビの目に、光はない


「さぁ、リナリーたち"仲間"を助けたかったらソレを殺さなきゃね、アレン」


「なっ…!」


まさか、と驚くアレンにラビが容赦なく襲いかかってきた

咄嗟に退魔の剣を盾にするが衝撃を殺しきれず地面に倒れてしまう

態勢を整える前に殴られ、その拳に冗談や手加減といったものがないことを身を持って思い知ってしまった


「くそ…っ!」


その態勢のまま、ラビに向けて退魔の剣を突き刺す。何かが憑りついているのならばこの剣で祓えるはずだと――そうであってくれと願いながら

だが……望んだ変化は、起こらなかった


「殺さずの退魔の剣じゃ効かないよー!?ラビは"心"を失っただけで魔がついたわけじゃないからね!?攻撃するなら爪(エッジ)の左手にしなきゃアレン!!」


楽しげに状況を見ていたロードは、ふと何かに気付いたようにアレンたちから視線を外す


「ボンゴレも動いちゃダメだよ?その炎で燃やしたって無駄なんだから」


その言葉に今まさに動こうとしていたツナはギクリと動きを止める


「蝋燭なんて無限にあるんだから、あの女傷つけたくないなら大人しくしていたほうがいいと思うよぉ?せっかく愛結姉に傷預けたのに、また体に穴あけたいのぉ?」


「くっ…」


未だ眠り続けているクロームを傷つけるわけにもいかず、ツナは唇を噛みしめる


「邪魔されちゃ困るからー…閉じ込めちゃおーっと」


「な、待…っ」


その言葉に慌てて動こうとするが、それよりも先に例のハコにあっけなくツナとクロームは閉じ込められてしまう


「っ出せ、ロード!!」


「だってあんまりボンゴレたち苛めたら愛結姉に怒られちゃうもんー。だから全部終わるまでそこで見ててぇ」


べーっと舌を出すロード

また、何もできないという事実にツナは悔しくて拳を握りしめる

こうしている間にもアレンは"仲間"に一方的に攻撃を受けているというのに…


「さぁ武器を変えてアレン!それともリナリーやボンゴレの悲鳴が聞きたい!?」


――ただ、見ていることしかできないなんて…!







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