悲しき詩 | ナノ




119



「なんでそんなに頑張っちゃうワケ?」


分からないとばかりに首を傾げる紅蓮


「ぐれ、」


「はい、回答者はマヌケ面を晒したティキ・ミック君!」


「おいおい、マヌケ面って…手厳しいなァ」


何かを言いかけたアレンを遮り、ティキに話を振る


「そうだなァ…やっぱ負けたくねぇからとか?」


"競争意識"は人の努力の源の一つだと言えるだろう

アイツに勝っていたい、アイツにだけは負けたくない…だから、頑張れる

アレンに、エクソシストに負けたくないから頑張るティキ

ノアに、自分に負けたくないから無意味かもしれない抵抗を頑張るリナリーとチャオジー

紅蓮に負けたくないから必死に強くなろうと頑張るツナ

女として負けたくなかったから、どんな手を使ってでも愛結を貶めようと頑張ったユミ


「…まァ、負けたいなんて思うやつなんていないだろうけどさ」


とん、と小さな音とともに地面に着地して嘲笑う紅蓮を見つめ、アレンは再度口を開いた


「…誰かを守るためにだって、頑張れます」


そう口にした瞬間、アレンの顔面スレスレのところを小さな石が猛スピードで抜けていった


「…」


「分かったって、お前らの仲間のために〜ってヤツ、聞き飽きたんだって」


凶器と化した石を投げた紅蓮の表情に、感情は浮かんでおらず背筋の凍るような殺気をまき散らしている


「別に、お前らが勝手に寒い仲間ゴッコしてんのは全然構わねェけど…俺の愛結をその下らねェ輪に入れるのは止めろ」


「…何故、そこまで彼女に固執するのですか…!」


アレンはずっと気になっていた疑問を、口にする

どう考えても、紅蓮の愛結に対する執着は度を超え過ぎている

その、以前ツナにも全く同じことを聞かれていた紅蓮は呆れたように、ハッキリとその"答え"を言葉にする


「んなもん、俺にとってアイツは全てだからに決まってんだろ。アイツのためなら俺の持ってるモン捨てることだってできる…お前らには無理だろうけどな」


「―――違う…っ!」


ガァン


割り込んできた声と、肌を焼く熱気に反射的に紅蓮は一歩後ろへ足を踏み込んだ

反射的に回避行動をした事実に紅蓮は小さく驚くが、すぐに動揺を隠し拳を突きだした人物に問いかけた


「何が違うってんだ?ボンゴレ」


本気で当てるつもりはなかったのだろう、追撃もせず…荒い呼吸を繰り返しながらも、ツナはしっかりと立ち上がる

気を失ったままの彼女はハコの中に残してきた

置いてくることに抵抗がないわけではないが…今この場に、彼女を傷つけようとする人間はいないだろう


「、全てを捨てれることが、本気だというのは違うよ…!!」


――紅蓮の言葉を、認めることはできなかった





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