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――崩れゆく方舟内
「……ビックリ人間ショー?」
発した言葉こそ軽いが、ティキの表情は言葉とは裏腹に固いものだ
「ビックリしすぎて全然笑えねェっつーの」
「なんだ、アレ」
紅蓮は濃い煙が漂っている、真空空間があった場所をジッと見つめる
空気が異様にピリついており、この場にいる人間全員、紅蓮と同じ場所を注視していた
「良くないものを…呼び起こしたか…?」
煙が晴れた場所に立っていたのはアレン、なのだが……その姿は、見慣れたものとは大きく違っていた
左腕がなくなっている代わりに、十字架が刻まれた大剣を持つアレンから大きな力を感じさせられ、リナリーは小さく息をのむ
――あんなアレンくん、知らない……
一方、ノアら…というよりも千年伯爵を良く知る人らも驚いていた
アレンが持つあの剣は……色こそ反転されているものの、姿形はあの千年伯爵の持つ剣と全く同じモノだったのだ
偶然か、それとも必然か―…
臨界点を突破した神ノ道化を、皆驚きに満ちた目で見つめていた
「守ってみせる…」
呟かれた言葉は、決意
アレンの強い意志を灯した目に、ティキは無意識のうちに体を強張らせる
一瞬、確かに千年公だと錯覚してしまった
そんなわけない、そう言い聞かせてアレンに対峙するティキの顔からは、先程まであった"余裕"は消え去っていた
「お前って…」
ガァンッ
その剣をティーズで作り出した盾で防ぎ、ティキはアレンに問いかける
「何でそんなに頑張れんだよ?」
「あなたたちだって…分かるはずだ!」
「―――俺にはよく分かんねェな、アレン」
「――!!」
突然当てられた殺気に、反射的にその場から飛びずさったアレン
ガンッ
「…お前さー、俺まで殺す気?」
「大丈夫っしょー俺、ティキに当てる程ノーコンじゃねェし!」
ハコの上にいる紅蓮は、手に持った小石を弄びながら、楽しげに嗤った
。
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