悲しき詩 | ナノ
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『アレン……!』
暗闇の世界で、愛結は言葉を失う
"アタシ"の言葉が事実だというのなら、いくら寄生型でもそれは耐えられる環境ではない
「フフッ、ティキは本気でアレンを殺すつもりだし、死んじゃうかもね?」
『――っ出して!ここから出して!!私の身体を返して…!!』
「ハイドーゾって返すと思ってんの?」
プツリと唐突に映像が消え、暗闇の世界に戻る
私と"アタシ"の、2人だけの世界
「…それに勘違いしてるみたいだから言っておくけど…アタシとアナタは全く別の存在というわけじゃないわよ」
『、何をいきなり…』
「さっきから聞いてれば、アタシとアナタは違う"モノ"だと思ってるでしょ?それは違うって言うこと」
意味の分からない話に、首を傾げる
『何言ってんの、違うでしょ。アンタはノアで、私はエクソシストよ』
「その前にアタシもアナタも"高井愛結"という人間よ?その前提の上でノアとエクソシストという相違点はあるけど…表に出なかっただけでアタシもちゃんと"高井愛結"という存在を形成する要素の一つなんだから」
闇が一層、深くなった気がした
「ここから出られる唯一の方法、教えてあげよっか?簡単な話、アタシとアナタが1つになればいいの」
『、じょ…冗談やめて!私はノアになんてならない!!』
「―――拒絶、するの?まだ、アタシを拒むの」
その、真剣な表情に少し言葉に詰まる
まるで昔の……そう、両親に気に入られようと必死だった幼い自分に良く似た目で見られ、思わず顔を背ける
あの頃のことなんて思い出したくない
どんなにイイコでいようと頑張って頑張っても…結局あっけなく売られたのだから
「こんなに追いつめても…まだ、足りないんだ。まだ、アナタはアタシを否定するんだ」
俯き、泣いているのかと思う程沈んだ声でぽつりと呟いた"アタシ"
「―――分かった、そっちがその気なら…アタシももう手加減しない」
顔をあげ、楽しげに笑うその表情に、先程の沈んだ感情はどこにも見えない
「もう求めるのは止める。欲しいものは力ずくで奪ってみせる」
『な、』
「闇よ。凝縮してアタシの剣となって」
手を真横に伸ばし放たれた、強制力のある言葉
「ココは"愛結"のなかなのだから、アナタはもちろんイノセンスが使えるわ。―――欲しい物は力ずくでも奪わないと…アナタはずぅっとこの闇の中だからね?」
漆黒色の剣を握った"アタシ"を見て、無言で爪を変化させて構えを取る
手加減する気は、一切なかった
「さぁ、始めましょうか」
艶やかに、"アタシ"はわらった
闇の華
(自由を求めて、愛を求めて)
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