悲しき詩 | ナノ




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『む、く……っ』


血を吐いて倒れる骸の姿を映像越しに見せられ、咄嗟に言葉がでてこない


「あーあ、完全に支配の能力のこと忘れてたんだねー」


クスクスと笑う"アタシ"

咄嗟に避けようと体を逸らしたようでギリギリ急所は外れていたが…あの出血量は、決して軽い怪我ではないのは一目瞭然だった

ただ見ていることしかできない、自分の無力さにギリッと拳を強く握りしめるが…

突如、倒れている骸の姿が霧に包まれたかと思えば…霧が晴れたそこにいるのは、骸ではなく細い少女


『、え…なんで、むっくーが…?』


「あれ?知らないっけ?骸はそこにいるクローム髑髏の体を借りて実体化してただけで、実際の骸は今も暗い牢獄に閉じ込められてるわ。深手を負ってクロームの体が限界だったみたいねぇ」


骸と同じく、腹部から血を流す少女の顔色は血色がなく青白い

ぐれん、と名を呼んだつもりだったが音が発せられることはなかった

血で染まる篝火を持って笑っている姿は、愛結の知る紅蓮とはかけ離れた…知らない存在だった


「……あなたは知らなかっただけ。紅蓮は最初からあんな男よ」


クロームにゆっくり近づく紅蓮を眺めながら、"アタシ"は続ける


「あの男はずっと…"レン"と呼ばれた日からずっと、あの男の世界にいるのはアナタだけ。手に入れるために、心の底から憎んでいる教団にも入ったし、手間暇かけて芝居をした。"アナタ"と"それ以外"でしか世界を見れなかった可哀想な男」


『そ、んな…』


「だから、紅蓮は全てを壊せる。何も躊躇うことなく、アナタに関わるモノ全てを全力で壊せるの。アタシがツナを見逃したような気まぐれを起こすこともないし」


『、ちょっと待って…ツナを、見逃す…?』


さらりと言われた言葉に、嫌な予感がする


「あぁ、アナタの体を使ってツナを刺したの。ふふ、かなりの出血量だったなー」


『…っ!!』


「そのまま死なれても面白くないから傷を取りあえず未来へ送っておいたんだからね、ほらここに……って、」


得意げな声が一転、訝しげなものに変わる

映像に映し出されたのは大量の血痕のみで…人の姿は見えない


「いくら傷をなかったことにしたって、あれだけ血流してたら動けないと思うんだけどな…」


不思議げな表情で映像を次々に切り替えていく

睨み合うアレンとティキ、それを心配げに見つめるリナリーと見知らぬ男、虚ろな表情でブツブツと呟いているユミ――…どんどん映像が切り替わっていくが、ツナの姿はどこにもない


「――ま、どこか隠れてるんでしょ。それよりもこっちのほうがずっと楽しそうだわ」


パッと映し出された映像

そこにはクロームにトドメを刺そうとしている紅蓮の姿が、映っているはずだった、が


「え?」


『、ツナ…!?』


動けるはずのないツナが、紅蓮の剣をグローブで受け止めていた







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