悲しき詩 | ナノ




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『ねぇ、なんで泣いてるの?』


しゃがみ込み、暗闇で一人泣いていた少女と目線を合わせてもう一度聞いてみる

ずっと泣いていたらしい、真っ赤に腫れた目が少し痛々しい


「……だれも、アタシのこと見てくれないから」


目元を乱暴に拭った少女は暗い瞳で見上げる


『へぇ、なら私と同じかな?私も一人ぼっちなの』


「…うそつき」


『え?』


「あなたにはたくさんの人がいるのに、嘘つき。アタシはあなたにすら見てくれないというのに、ずるい」


こんな暗い世界にいる私を、見てくれる人なんているのだろうか?

そこまで考えて首を傾げた時――突如として、様々な情報が頭に叩きつけられた


研究所で出会った骸たち
ルベリエと名乗る男の手のぬくもり
教団での充実した日々
ユミの狂気に満ちた目
東ヨーロッパ支部で紅蓮に背を向けた日
逃げた先で出会った、彼らとの思い出


頭が痛くなる程、一気に様々な情報が流れ込んでくる

どれも大切な、"私"を形成する大切な思い出

気付けば眠気など吹っ飛んでいて、私は改めて目の前の少女を見つめる


『……あなたが、ノア』


「そうよ、アタシはノアの力そのもの。メモりーが一時的に人格を形成したマガイモノ」


もう少女の目に涙は見当たらない


「あなたが埋め込まれた左目はノアの力。イノセンスとの大きな反発が生じた結果、暴走して研究所を赤く染め…アタシはあなたの奥深くへと沈められた」


『…そんなこと、どうだっていい…私を、かえして…』


「かえす?何を?」


『っ私を!みんなのいる場所に帰して!!』


焦りからカッとなり声が大きくなる

今どんな状況なのか全く分からない。だけど今こうしてノアの力が前面に出てる状況は決して良くはないのは分かる

早く、一秒でも早くみんなのもとに帰りたい…!


「……ほら、やっぱり嘘つきだ。あなたには帰る場所があるじゃない」


暗闇が大きく揺らぐ


「でも今はアタシが体の支配権を持ってるから無理ね。もちろん渡すつもりもない」


一瞬少女の輪郭がぼやけたかと思うと、少女の姿は掻き消え代わりに存在したのは、自分と瓜二つの容姿を持つ女だった

黒い肌と額の十字架、そして瞳の色が違うだけの、瓜二つの2人


「見せてあげよっか?今あなたの大切な人達がどうなってるのか」


パッと暗闇の中に突如として映像が浮かび上がる


『……っ!!』


「あんたの帰る場所なんて、全部奪ってあげる」


映し出された光景に、言葉を失った







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