悲しき詩 | ナノ




103



「愛結ちゃ、」


『その名前で呼ばないで!!アタシを見てくれてるわけじゃないくせに!』


アタシだって"愛結"なのに、みんなアタシではなくあの子しか見ない。アタシに気付いてくれない

他のノアだってそうだ

――紅蓮はまだ一度も、アタシのこと名前で呼んでいない

必要とされているのはアタシではなくあの子

黒のアタシは必要ないと言わんばかりの目に苛々する


『みんなあの子しか見ない…!アタシは要らないの?アタシだってあの子なのに』


「そ、それは…っ、」


『―――それが、」


ダッと地を蹴る

何が起きたのか理解できないと言わんばかりに見開かれた目を思いっきり睨みつけ――


ドンッ、


『それが、イラつくのよ…!』


―――握りしめていた剣を、突き刺した


「う、あ……っ」


脇腹に滲む赤い血と、歪むツナの顔

それらにどこか安堵感を覚えながら、ツナの顔を見上げる


「っ、愛結、ちゃ……」


激痛がはしっているだろう中でもなお、あの子の名前を呼ぶその精神力は驚嘆に値する


『…っまだあの子の名前を…!』


突き刺した剣で、更に深く抉る


「っああああああ!!」


「ツナ!」


その悲鳴にアレンは咄嗟にツナのもとに駆け寄ろうとするが、


「おいおい少年ー。俺まだ少年に説教の礼してねーんだからよォ」


ティキがそれを許すはずもなく、アレンは唇を噛みしめる





「お前は行かなくていーわけ?」


「何故僕がボンゴレ如きのために動かなくてはいけないのです。冗談ではありません」


「ククッ…冷てーヤツ」


骸は我関せずとばかりに紅蓮に飛び込んでいく


「シンパイじゃねーの?お前らナカマってやつなんだろ?」


「ボンゴレが仲間?くだらない」


畜生道によって召喚された蛇を燃やす紅蓮に聞こえぬよう、小さく囁いた


「――僕を倒した男です。そう簡単にはくたばりませんよ」




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